【国立映画アーカイブ】上映企画   日本の女性映画人(3)――1990年代

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【国立映画アーカイブ】上映企画  
日本の女性映画人(3)――1990年代
Women Who Made Japanese Cinema [Part 3]: 1990s

会期: 2025年2月11日(火)―3月23日(日)※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]
定員:310名(各回入替制・全席指定席)
   各回の開映後の入場はできません。
主催:国立映画アーカイブ
企画協力:森宗厚子

料金:一般520 円、 高校・大学生・65 歳以上 310 円、小・中学生100 円、障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)・国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料

★チケット、スケジュールなど詳細はHPをご覧ください
HP https://www.nfaj.go.jp/film-program/women202502/

2023年度の「日本の女性映画人(2)―1970-1980年代」に続き、その功績を回顧する特集上映を開催します。
 1980年代以前の日本の映画界では、俳優出身の女性監督が台頭し、また記録映画やピンク映画の分野では多くの作品を発表する女性監督の活躍も見られた一方で、一般劇映画の作り手として女性監督がキャリアを築いていくのは困難であり、1990年代にようやく継続的に作品を発表する監督が目立つようになりました。つまり、1990年代は、日本映画史において女性が監督を「職業」とし始めた最初の時代であったといえます。
本特集では、1990年代前後の作品を含め、劇映画、ドキュメンタリー、実験映画、アニメーションなど計52作品(37プログラム)を上映し、それぞれの女性映画人を顕彰するとともに、日本映画史を見据える新たな視点を提示します。

*見どころ*
▼メジャーでインディーズで…映画監督を「職業」とする女性たちの登場
海外留学を経て長篇監督デビューを果たした山﨑博子や佐藤嗣麻子、CMディレクターを経て映画監督となった松浦雅子は、
大手映画会社のもとで拡大公開される作品を手がけた女性監督の先駆として特筆すべき存在です。一方、ぴあフィルムフェステ
ィバル(PFF)で頭角を現し、ロッテルダム国際映画祭で受賞した風間志織、個人映画で注目を浴びたのち長篇監督デビュー
作によりカンヌ国際映画祭で受賞した河瀨直美など、インディーズ的才覚を持った女性映画作家も国内外で高く評価されまし
た。

▼個人映画・実験映画の分野で活躍した女性作家たち
1990年代には、イメージフォーラム・フェスティバル(IFF)など個人映画・実験映画の発表の場を通じて、多くの女性映像
作家たちがそれぞれ独自の個性を発揮しました。本特集では、80年代から映像制作を行っていた小口詩子、大学在学中より
身体表現と映像制作を行い、初作品でIFFに入選した和田淳子、幻想的かつブラック・ユーモアの効いた世界観を展開した寺
嶋真理、身体と容姿にまつわる関心を突きつめることで「自己と他者」の関係を探求した歌川恵子らの作品を取り上げます。ま
た、次の世代につらなる先駆的な自主映画・実験映画を手がけた1990年代以前の女性映画人の作品として、道下匡子と鵞
樹丸の作品も上映します。

▼1990年代の潮流に寄与した映画プロデューサーの活躍
阪本順治監督作品を長年にわたって支えてきた椎井友紀子や、原将人『20世紀ノスタルジア』(1997)の製作のきっか
けをつくった佐藤美由紀、映画美学校の立ち上げにも参加した松田広子、夫の小川紳介が残した記録フィルムをもとにした作
品『満山紅柿』(2001)をプロデュースした白石洋子など、1990年代は女性の映画プロデューサーが次々に頭角を現した時
代でもあります。本特集では、これらの作品が同時代に与えたインパクトと現在に至る影響を再検証します。

上映作品(37プログラム、計52作品)
◆監督◆
山﨑博子『ぼくらの七日間戦争2 』1991
佐藤嗣麻子『エコエコアザラク Wizard of Darkness』 1995
『K-20 怪人二十面相・伝』2008
松浦雅子 『人でなしの恋』1995
     『PLATONIC SEX NEW』2001
風間志織 『冬の河童』1995
『火星のカノン』2002
『せかいのおわり』2004
奈良橋陽子 『WINDS OF GOD』1995
髙山由紀子 『風のかたみ』1996
河瀨直美『萌の朱雀』1997
松井久子『ユキエ』1998
合津直枝 落下する夕方 1998 合津直枝
浜野佐知 『第七官界彷徨 尾崎翠を探して』1998
吉行由実『発情娘 糸ひき生下着』1998
小谷内郁代『境界線の向こう側 』1998

◆監督(ドキュメンタリー)◆
栗原奈名子/山上千恵子/瀬山紀子
『ルッキング・フォー・フミコ』1993 栗原奈名子
『30年のシスターフッド 70年代ウーマンリブの女たち』2004 山上千恵子、瀬山紀子
羽田澄子『女たちの証言—労働運動のなかの先駆的な女性たち』1996
熊谷博子『映画をつくる女性たち』 2004

◆監督(アニメーション)◆
四分一節子『雪渡り NEW』 1994
山田火砂子『エンジェルがとんだ日』1995

◆監督(自主映画/個人映画/実験映画)◆
小口詩子『小口詩子のおでかけ日記』1988
    『 ばら科たんぽぽ』 1990
    『眠る花』1991
和田淳子『閉所嗜好症』1993 
    『桃色ベビーオイル』1995
寺嶋真理『緑虫 』1991
    『女王陛下のポリエステル犬』1994
歌川恵子『みみのなかのみず』1993
    『超愛人 』1994
    『カルデラ姫』1995
道下匡子『Cherry Blossoms』1975
    『in my home townⅠ』1976
    『in my home townⅡ』1976
    『in my home townⅢ』1976
鵞樹丸『わらじ片っぽ』1976

◆脚本◆
吉村元希『夢の女』1993 坂東玉三郎
信本敬子『ナースコール』1993 長崎俊一
奥寺佐渡子『学校の怪談』1995 平山秀幸
森下直『誘拐』1997 大河原孝夫
神山由美子『OL忠臣蔵 1997 原隆仁
西田直子 『多淫OL 朝まで抜かないで』2000 女池充
    『姉妹OL 抱きしめたい』2001 田尻裕司
本調有香『blue』2003 安藤尋

◆製作◆
椎井友紀子 『ビリケン』1996 阪本順治
松田広子『どこまでもいこう』1999 塩田明彦
佐藤美由紀 『20 世紀ノスタルジア』1997 原将人
白石洋子 『満山紅柿』2001 小川紳介、彭小蓮

◆その他◆
浅梨なおこ『ケルベロス 地獄の番犬』1991 押井守
黒澤和子/野上照代 『まあだだよ』
芦澤明子/万田珠実『Unloved』2002 万田邦敏

オーストリア映画週間2024 Our Very Eye―揺るぎなき視線

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●日時:6月29日(土)〜7月5日(金) 
●場所:シアター・イメージフォーラム
(渋谷区渋谷2-10-2)
●チケット:
主催:オーストリア文化フォーラム/助成:オーストリア映画協会、オーストリア産業省
協力:ダゲレオ出版

◆上映作品◆

『クラブゼロ』Club Zero  
 監督:ジェシカ・ハウスナー

『悪魔の風呂』 Devil’s Bath  
 監督:ヴェロニカ・フランツ、ゼヴリン・フィアラ

『我来たり、我見たり、我勝利せり』Veni Vidi Vici
 監督:ダニエル・フーズル、ユリア・ニーマン

『無用物』Matter Out of Place 
 監督:ニコラウス・ゲイハルター

『ウィーン10区、ファヴォリーテン』 Favoriten  
 監督:ルート・ベッカーマン

『ベアトリックス Beatrix』 
 監督:ミレーナ・チェルノフスキー、リリス・クラクスナー

特別上映『ミダースの蟻』 Midas’ Ants 
 監督:エドガー・ホーネットシュレーガー

公式サイトHP: www.imageforum.co.jp/afw2024

三上智恵監督最新作『戦雲~いくさふむ』公開記念特集上映 @シネマハウス大塚

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シネマハウス大塚特別企画
三上智恵監督最新作『戦雲~いくさふむ』公開記念特集上映


【企画内容】
沖縄に拠点を置き、米軍基地問題・日本政府の対応の過去・現在を、沖縄県民の側に立ち、その不屈の戦いを描いてきた三上智恵監督。
その三上監督が6年ぶりに世に問う最新作『戦ーいうさふむー雲』。急速な軍事化が進む与那国島、宮古島、石垣島、沖縄本島の姿を描く。
『戦いくさふむ雲』2024年作品132分
日米両政府の主導のもと急速な戦力配備が進む沖縄・南西諸島。自衛隊ミサイル部隊の配備、弾薬庫の大増設、全島民避難計画…。九州から南西諸島を主戦場とし、現地の人々の犠牲を事実上覚悟した防衛計画が露わになった。本土メディアがほとんど報じない中、沖縄から日本全土に広がる戦雲の予兆に警鐘を鳴らす。
この最新作をはじめ、これまで三上監督が監督した3作品『戦場ね止み』『標的の島 風かたか』『沖縄スパイ戦史』を同時上映。

[上映スケジュール]
<上映開始時間と作品>
      12時30分      15時30分      18時30分
4/13(土)戦いくさふむ雲   戦場ぬ止み     標的の島 風かたか
4/14(日)戦いくさふむ雲   標的の島 風かたか 沖縄スパイ戦史
4/15(月)戦場ぬ止み     沖縄スパイ戦史   戦いくさふむ雲
4/16(火)標的の島 風かたか 戦いくさふむ雲   戦場ぬ止み
4/17(水)戦いくさふむ雲   標的の島 風かたか 沖縄スパイ戦史
4/18(木)戦場ぬ止み     戦いくさふむ雲   標的の島 風かたか
4/19(金)沖縄スパイ戦史   標的の島 風かたか 戦いくさふむ雲

<三上監督来館トーク>
4月13日(土)15時30分、18時30分の会終了後。
4月14日(日)18時30分の会終了後。

[入場料金]
『 戦いくさふむ雲 』=1,900円(税込)/シニア1,300円(税込)
全国共通特別鑑賞券使用可
その他の作品=1,500円(税込)/となります。
販売 朝10時半から
整理番号順・各回入替・定員制。座席数に限りがございますのでご注意ください。
[予約。取材他問い合わせ]
シネマハウス大塚
info@cinemahouseotsuka.com


シネジャ作品紹介
『戦雲~いくさふむ』2024年/132分
『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』2015年/129分
『標的の島 風(かじ)かたか』2017年/119分
『沖縄スパイ戦史』2018年/114分



『映画に愛される街、TOKYO!―アート・キッチュ・エキゾチズムー 』

期間:2024年3月16 日(土)~3月29日(金)
会場:ユーロスペース 公式HP:http://www.eurospace.co.jp
上映スケジュール:http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000764

主催:ユーロスペース/共催:トリクスタ/ライトフィルム
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
上映協力:(五十音順)シネマトリックス、松竹、東京テアトル、東北新社、トランスフォーマー、パンドラ、ビターズ・エンド、ロングライド

東京を異なる視点から見つめる

いつの時代も人々を惹きつけてやまない東京/TOKYO。洋の東西を問わず、この街に魅せられた多くの映像作家たちが東京を舞台にバラエティに富んだ作品を生み出してき ました。あらゆるものを貪欲に取り込み、変化し続ける東京は元来、多様性を体現してきた街でもあります。映画の中で東京/TOKYOという街が被写体・背景としてどのように 描かれてきたのかを改めて見つめることは、街の魅力を再発見すると共に、東京で暮らし、あるいは憧れを抱いてきた自らを見つめ直すことにも繋がるのではないでしょう か。“文化の坩堝”とも称される渋谷の地で、世界中の映画を上映し続けてきた日本で最も長い歴史を誇る独立系映画館のスクリーンに、いつかの自分を見つけてみませんか。


*上映作品*
『IGUANA TOKYO ―イグアナ トウキョウ―』 原題:IGUANA TOKYO
監督:カアン・ミュジデジ
出演:エルタン・サバーン、サーデー・アクソイ、デニス・ウルクほか
2022年/74分/トルコ・日本・ドイツ合作/配給:トリクスタ
長編デビュー作『シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語』でヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞を受賞したトルコの俊英カアン・ミュジデジが紡ぎ出すサスペンススリラー。東京で幸せに暮らしていたはずの一家が、ゲームを通じてメタヴァースの世界に足を踏み入れたことから奇妙な出来事に巻き込まれ始め、やがて崩壊へと向かうさまをペットのイグアナの視点から巧みに描き出す。
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/502636132.html


『書かれた顔[4Kレストア版]』原題:The Written Face ※2K上映
監督:ダニエル・シュミット
出演:坂東玉三郎、武原はん、杉村春子、大野一雄、蔦清小松朝じ、坂東弥十郎ほか
1995年/94分/日本・スイス合作/配給:ユーロスペース
『ラ・パロマ』など退廃的な映像美で映画ファンのみならず多くの映像作家をも魅了したスイス人監督ダニエル・シュミットが当代きっての女形・坂東玉三郎に迫った1995年公開の映画の4Kレストア版。現実と虚構を織り交ぜた構成で、古典舞踊家の武原はん、女優の杉村春子、舞踏家の大野一雄、映画製作時101歳で日本最高齢の芸者だった蔦清小松朝じも出演しており、フィクションパートでは青山真治が助監督を務めている。

『神々の山嶺』原題:LE SOMMET DES DIEUX
監督:パトリック・インバート
原作:「神々の山嶺」作・夢枕獏 画・谷口ジロー(集英社刊)
日本語吹き替えキャスト:堀内賢雄、大塚明夫、逢坂良太、今井麻美/吹替翻訳:光瀬憲子
2021年/94分/フランス・ルクセンブルグ合作/配給:ロングライド、東京テアトル
「孤独のグルメ」などの傑作漫画で知られ、2017年にこの世を去った漫画家・谷口ジローが夢枕獏のベストセラー山岳小説を漫画化した『神々の山嶺』をフランス映画界でアニメーション化した。「ジョージ・マロリーはエベレスト登頂に成功したのか?」という山岳界の謎に迫りつつ、2人の日本人登山家が過酷なエベレストに挑むさまを描き出す。本国フランスで大ヒットを記録し、セザール賞の長編アニメーション映画賞を受賞した。
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/489378415.html

『珈琲時光』原題:珈琲時光
監督:ホウ・シャオシェン
出演:一青窈、浅野忠信、萩原聖人、余貴美子、小林稔侍ほか
2003年/103分/日本/配給:松竹
小津安二郎の生誕100年を記念して2003年に製作。『悲情城市』でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞した台湾の名匠・侯孝賢が監督・脚本を務め、随所に小津の『東京物語』へのオマージュを散りばめつつ、台湾人の母を持つフリーライター・陽子の日々の暮らしを淡々と描く。2002年に「もらい泣き」でデビューし、本作が公開された2004年には「ハナミズキ」が大ヒットした歌手の一青窈が主人公の陽子役で女優デビューを果たしている。

『二郎は鮨の夢を見る』原題:JIRO DREAMS OF SUSHI
監督:デヴィッド・ゲルブ
出演:小野二郎、小野禎一、小野隆士、山本益博ほか
2011年/82分/アメリカ/英語字幕/配給:トランスフォーマー
銀座の名店「すきやばし次郎」の店主で寿司職人の小野二郎氏に密着したドキュメンタリー。オバマ大統領の来日時の会食の場として使用され、ハリウッドセレブにも多くのファンがいることでも知られる名店「すきやばし次郎」。その店主で「ミシュラン三つ星レストランの最高齢料理長」としてギネス認定もされた二郎の職人としての哲学、師に学び、超えようと精進する2人の息子や弟子たちとの関係性を描き出す。
http://www.cinemajournal.net/review/2013/index.html#jiro_sushi

『TOKYO!』原題:TOKYO
〈インテリア・デザイン〉
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:藤谷文子、加瀬亮ほか
〈メルド〉
監督:レオス・カラックス
出演:ドゥニ・ラヴァン、ジャン=フランソワ・バルメールほか
〈シェイキング東京〉
監督:ポン・ジュノ
出演:香川照之、蒼井優ほか
2008年/110分/フランス・日本・韓国合作
クリエイティビティあふれる3人の鬼才が東京を舞台に紡ぎ出した3編の物語。ファンタジー(ミシェル・ゴンドリー監督「インテリア・デザイン」)に不条理劇(レオス・カラックス監督「メルド」)、ラブストーリー(ポン・ジュノ監督「シェイキング東京」)と、それぞれの監督の持ち味が存分に発揮されたオムニバスとなっている。エンディングテーマで流れるのは高橋幸宏×細野晴臣×坂本龍一によるHASYMOの「Tokyo Town Pages」。

『TOKYO EYES』原題:Tokyo Eyes
監督:ジャン=ピエール・リモザン
出演:武田真治、吉川ひなの、杉本哲太、水島かおり、大杉漣ほか
1998年/98分/日本・フランス合作/配給:ユーロスペース
世紀末の東京を舞台に、謎めいた発砲事件を起こし続ける青年と彼に惹かれる少女の姿をスタイリッシュな映像と音で描く。フランス人のジャン=ピエール・リモザンが監督を務め、共同脚本に坂元裕二も名を連ねている。カルト的人気を博した「NIGHT HEAD」の武田真治とモデル・女優・歌手の吉川ひなのという、当時絶大な人気を誇っていた2人が主演を務め、事件の鍵を握るヤクザをビートたけしが演じ、渋谷や下北沢でロケが行われた。

『東京画[2Kレストア版]』原題:Tokyo-Ga
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:厚田雄春、笠智衆、ヴェルナー・ヘルツォーク
1985年/92分/西ドイツ・アメリカ合作/配給:東北新社
ヴィム・ヴェンダースが、敬愛する小津安二郎へのオマージュを込めて制作したドキュメンタリー。小津が描いた東京を求めヴェンダースはカメラを回し続ける。竹の子族やパチンコ、ビルの屋上のゴルフ練習場、食品サンプルをつくる工房、東京タワーの展望室、そして笠智衆、小津組の名カメラマン・厚田雄春へのインタビューなどを交えつつ、『東京物語』(1953年)からちょうど30年後の1983年当時、いまから約40年前の東京の風景が映し出される。

『都市とモードのビデオノート』原題:Aufzeichnungen zu Kleidernund Stadten /Notebook on Cities and Clothes
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:山本耀司、ヴィム・ヴェンダース
1989年/81分/西ドイツ・フランス合作/配給:東北新社
『PERFECT DAYS』のヒットも記憶に新しいドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダースが、ポンピドゥーセンター(国立芸術文化センター)の依頼を受けて、ファッションデザイナー・山本耀司の仕事を追いかけたドキュメンタリー。フィルムカメラと8ミリビデオカメラの映像を織り交ぜ、1 9 8 9 年春夏のパリ・コレクションに向けた準備過程を克明に記録すると共にヴェンダースとの対話を通じて山本のファッションや仕事への哲学が語られる。

『不思議なクミコ』原題:Le myst re Koumiko
監督:クリス・マルケル
出演:村岡久美子
1965年/47分/フランス/配給:パンドラ
後世の映像作家に大きな影響を与えた時間と記憶をめぐるS F 短編映画『ラ・ジュテ』で知られる作家、映画監督、写真家、マルチメディアアーティストのクリス・マルケルによる実験的ドキュメンタリー。1 9 6 4 年1 0 月の東京オリンピックで賑わう、高度経済成長のさなかの日本を舞台に、フランス語を学ぶ20代の日本人女性・クミコの姿を追いかける。武満徹の「弦楽のためのレクイエム」が音楽として使用されている。

『ライク・サムワン・イン・ラブ』原題:Like Someone in Love
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:奥野匡、高梨臨、加瀬亮ほか
2012年/109分/日本・フランス合作/配給:ユーロスペース
『友だちのうちはどこ?』、『桜桃の味』のイランの巨匠で2016年に76歳で逝去したアッバス・キアロスタミによる人間ドラマで2 0 1 1 年に日本で撮影が行われた。84歳の元大学教授の男性、彼の元に派遣されたデートクラブでアルバイトをする女子大生、彼女の恋人の3人の愛と欲望と嘘が絡み合い、繊細なドラマが綴られていく。映画タイトルと同じジャズ・スタンダード「Like Someone in Love」(エラ・フィッツジェラルド)が劇中でも使用されている。
http://www.cinemajournal.net/review/2012/index.html#likesomeoneinlove

『ロスト・イン・トランスレーション』原題:Lost in Translation
監督:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、ジョバンニ・リビシ、アンナ・ファリスほか
2003年/102分/アメリカ/配給:東北新社
『ヴァージン・スーサイズ』に続くソフィア・コッポラの長編2作目で、アカデミー賞脚本賞を受賞した。CM撮影のために東京に滞在中の初老のハリウッド俳優と有名写真家の夫に同伴して東京に来たもののヒマを持て余している若い妻。異国で孤独と虚しさを抱えたアメリカ人男女の心の交流を描く。“異邦人”の視点で切り取られた東京の街並みが印象的。渋谷のスクランブル交差点を世界中に知らしめた作品とも言われる。

[スペシャル・スクリーニング]
(ホームムービー特別上映会)あなたの東京、わたしの東京
家族の記録、地元のお祭り、散歩の風景など、地域や家庭に眠っていた8 mmや16mmフィルムのホームムービーを上映。
商業映画とはまた異なる、市井の作家の私的な視点が捉えた東京の記憶が、あなたに語りかけ、共鳴します。

【国立映画アーカイブ】上映企画  日本の女性映画人(2)――1970-1980年代

【国立映画アーカイブ】上映企画
日本の女性映画人(2)――1970-1980年代
英題: Women Who Made Japanese Cinema [Part 2]: From the 1970s to the 1980s

会期: 2024年2月6日(火)―3月24日(日)※月曜休館

会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]

公式サイト: https://www.nfaj.go.jp/exhibition/women202312/

日本映画の歴史において、監督のみならず多様な職域で女性映画人たちが手腕を発揮してきました。2022年度に開催された「日本の女性映画人(1)――無声映画期から1960年代まで」に続き、 1970-80年代に生じた映画界の構造変化の中で躍進した女性映画人たちを取り上げ、監督・脚本・製作などの分野に着目して、劇映画からドキュメンタリーまで計74作品(47プログラム)が上映されます 。

ご案内文より
*********
1970年代以降は独立プロを基盤に、女性監督たちが活路を切り拓いていきます。女優出身の 左幸子『遠い一本の道』 (1977)や 宮城まり子『ねむの木の詩がきこえる』 (1977)は社会運動に根差した題材で大きな反響を呼び、自主製作の動向から頭角を現した 鵞樹丸 は 『わらじ片っぽ』 (1976)で前衛的表現を開拓しました。1980年代にかけて続々と女性が監督を手がけるようになり、作品の多様化が顕著になっていきます。

 一方、撮影所体制がゆらぐ中で、ジャンル映画において女性脚本家たちが台頭してきたこともこの時期の特徴です。 『メカゴジラの逆襲』 (1975)の 高山由紀子 や 『ビー・バップ・ハイスクール』 (1985)の 那須真知子 などが娯楽映画に新風を吹き込みました。

 さらに今回は小特集として、 記録映画作家を取り上げ、音声を画と対等に捉えて革新的なドキュメンタリーを打ち出した時枝俊江と女性史を語り継ぐ作品群を手がけた藤原智子の業績を再評価します 。

 日本映画の転換期に新機軸をもたらした女性映画人たちの足跡を振り返ることにより、日本映画史の再考につながる新たな視座が切り拓かれることを願っております。

*見どころ*

▼女性監督作品の多様化 前衛的表現を開拓した自主映画作家・鵞樹丸の発見!
自主製作の動向から頭角を現した 鵞樹丸 (本名・村上靖子)は、 『わらじ片っぽ』 (1976)によって女性の自由と抑圧をテーマに時空を交錯させて描き、前衛的表現を開拓しました。壮大なスケールの自主製作に取り組み、インディペンデント作家としての先駆的作品となりました。日本映画史のミッシング・リンクとも位置づけられる重要な発掘にご注目ください。

▼ジャンル映画にも活躍の場を広げた女性脚本家たち
1950-60年代には文芸映画の隆盛を背景として水木洋子や田中澄江などが健筆をふるいましたが、その後、撮影所体制のゆらぐ中で、時代劇や特撮映画も含めて幅広いジャンル映画にも女性脚本家が活躍の場を広げました。娯楽映画に新風を吹き込んだ 高山由紀子 や 那須真知子 をはじめ、東宝青春映画路線で活躍した 重森孝子 や、NHK大河ドラマ初の女性脚本家となった 大野靖子 などの作品を上映します。

▼ドキュメンタリー作家の小特集―I時枝俊江、II藤原智子
女性監督たちが実績を積み重ねてきた記録映画では、様々な秀作群が送り出されてきました。岩波映画製作所で羽田澄子と並んで活躍した 時枝俊江 は、音声を画と対等に捉えて革新的なドキュメンタリーを打ち出しました。ライフワークとなった幼児教育を扱った作品群をはじめ、21作品の上映によって幅広い業績を再評価します。また、 藤原智子 は日本の女性史について多面的にアプローチした骨太な記録映画を手がけました(7作品を上映)。


上映作品(74作品)
◆監督◆
鵞樹丸(村上靖子)『 わらじ片っぽ 』(1976)『 きこぱたとん 』(1993)
宮城まり子『 ねむの木の詩がきこえる 』(1977)
左幸子『 遠い一本の道 』(1977)
沖山秀子/珠瑠美『 グレープフルーツのような女 性乱の日々 』(1981)『 熟女スワップ若妻レズ 乱行恥態 』(1994)
栗崎碧『 曽根崎心中 』(1981)
倉岡明子『 六ヶ所人間記 』(1985)
槙坪夛鶴子『 若人よ いのちと愛のメッセージ 』(1987)
浜野佐知『 ダブルEカップ 完熟 』(1988)『 (生)性体験 世にもみだらな女たち 』(1989)
熊谷博子『 よみがえれカレーズ 』(1989)『 映画をつくる女性たち 』(2004)

◆脚本家◆
宮内婦貴子『 その人は女教師 』(1970)
服部佳『 新座頭市物語 笠間の血祭り 』(1973)
重森孝子『 二十歳の原点 』(1973)
大野靖子『 沖田総司 』(1974)
高山由紀子『 メカゴジラの逆襲 』(1975)
鹿水晶子/木村智美『 団地妻 二人だけの夜 』(1978)『 イヴちゃんの花びら 』(1984)
田中晶子『 ダイアモンドは傷つかない 』(1982)
筒井ともみ『 それから 』(1985)
那須真知子『 ビー・バップ・ハイスクール 』(1985)

◆製作者◆
小林佐智子『 極私的エロス・恋歌1974 』(1974)
原田美枝子『 ミスター・ミセス・ミス・ロンリー 』(1980)
髙野悦子『 恋の浮島 』(1982)
大林恭子『 廃市 』(1984)
朝倉大介(佐藤啓子)『 人妻の悶え ザ・不倫 』(1981)『 変態家族 兄貴の嫁さん 』(1984)
飯野久『 黒い雨 』(1989)
岡本みね子『 大誘拐 RAINBOW KIDS 』(1991)

◆美術監督◆
朝倉摂『 修羅 』(1971)
菊川芳江『 四畳半襖の裏張り 』(1973)『 江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者 』(1976)
星埜恵子『 ウンタマギルー 』(1989)

◆実験映画◆
出光真子『 AT YUKIGAYA TWO 』(1974)『 父の情景 』(1981)『 たわむれときまぐれと 』(1984)『 ざわめきのもとで 』(1985)『 加恵、女の子でしょ! 』(1996)
九條映子/田中未知『 迷宮譚 』(1975)『 疱瘡譚 』(1975)『 審判 』(1975)

◆アニメーション◆
『 ピカドン 』(1978)『 水仙月の四日 』(1990)『 火の鳥2772 愛のコスモゾーン 』(1980)


【小特集I 時枝俊江】
『 町の政治 べんきょうするお母さん 』(1957)『 This is TOKYO 』(1960)『 新しいガス源をもとめて 』(1965)『 夜明けの国 』(1967)
『 文教の歩みをたずねて 文京の文化財 』(1975)『 建造物との対話 』(1980)『 ぶんきょうゆかりの文人たち 観潮楼をめぐって 』(1988)『 越後上布 』(1980-81)『 歌舞伎の魅力 舞台 』(1981)『 ともだち 』(1961)
『 ケンちゃんたちの音楽修行 ヤマハ音楽教室四才児初期の記録 』(1965)
『 学級集団の成長 ある教師の保育日誌から 』(1977)
『 子どもをみる目 ある保育者の実践記録から 』(1978)
『 光った水とろうよ 幼児の知的好奇心をさぐる 』(1979)
『 こころをひらく 育ちあいをもとめる保育 』(1981)
『 みどりぐみ こ・う・じ・げ・ん・ば 幼児の自己充実をもとめて 』(1982)
『 みる、きく、たしかめる 創りだす自分のせかい 』(1983)
『 いいこといいこと考えた 遊びでひろがる数量の世界 』(1985)
『 病院はきらいだ 老人の在宅ケアを支えるネットワーク 』(1991)
『 農民とともに 地域医療にとりくみ50年 』(1995)
『 地域をつむぐ 佐久総合病院小海町診療所から 』(1996)


【小特集II 藤原智子】
『 歌舞伎の立廻り 』(1981)『 歌舞伎俳優研修教材シリーズ No.8 歌舞伎の後見 』(1992)『 誕生 その歓び 』(1986)『 杉の子たちの50年 学童疎開から明日へのメッセージ 』(1995)『 ルイズ その旅立ち 』(1997)『 伝説の舞姫 崔承喜 金梅子が追う民族の心 』(2000)『 ベアテの贈りもの 』(2004)