ベストテン2024 よしだまさし

昨年は新旧あわせて196本の映画を観たのですが、その中から順不同で気に入った映画を10本ピックアップしてみます。

『赤い糸 輪廻のひみつ』台湾
 一昨年のマイフェイバリットムービー『ミス・シャンプー』のギデンズ・コー監督の作品。破天荒な設定で全力疾走しつつ、ピュア過ぎる恋愛にホロリとさせ、ここぞというところで涙腺に強烈な攻撃を仕掛けてくるという、無敵のザッツ・エンターテインメント。これが日本ではソフト化もネット配信も予定がないというのが実に残念。

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『僕と幽霊が家族になった件』台湾
 台湾映画をもう1本。こちらは暴走刑事とゲイの幽霊のバディものという、よくそんな設定を思いついたな!という作品。要所要所のアクションも充実しているし、コミカルな演出も絶好調だし、泣かせる場面ではグイグイ押してくるしで、言うことなし。

『毒舌弁護人』香港
 香港映画からは、法廷での丁々発止のやりとりを描いた本作をチョイス。非アクション映画でありながら、香港映画の興収記録を塗り替えたという異色作。脚本がよくできていて、勝ち目のない法廷闘争で二転三転したあげくの着地点が実に心地よい。

『武道実務官』韓国
 韓国映画からは、武道実務官という馴染みのない職業を題材とした本作をチョイス。題材の面白さにプラスして、主人公を演じているキム・ウビンのキレのあるアクションシーンをたっぷりと楽しんだ。なんの前情報もないままたまたま観てしまった作品なのだけれど、なかなかの拾いものでありました。

『JAWAN/ジャワーン』インド
 話題作の多かったインド映画では、シャー・ルク・カーンを2倍楽しめる本作をチョイス。とにかく面白い。遠慮容赦なく楽しませてくれる。娯楽映画の要素をこれでもかこれでもかと叩き込んだ作品でありながら、社会派ドラマとしてのメッセージまでこめられているという驚愕のエンターテインメント。インド映画の本気を見せつけられました。

『MALLARI』フィリピン
 3つの時代の物語が複雑に絡み合う驚愕のホラー映画。脚本が実によくできていて、観ていてとにかくドキドキさせられる。途中からは、驚愕の展開の連続で、とにかく圧倒される。古い家から発見された映画フィルムを再生してみると、そこに映っていたのは映画カメラが発明されるよりも前の時代の光景で、しかもそのフィルムに映っている人物が映像の中から主人公に向って危険を知らせるのである。ね、ドキドキするでしょ。これは、日本語字幕を入れて日本で劇場公開してもいいレベルの作品であると確信しています。みんなに観せたい!

『Rewind』フィリピン
 フィリピン映画の興収記録を塗り替えた作品。気が短くすぐにかんしゃくをおこす性格のゆえに取り返しのつかない失敗をした男が、24時間前にもどってやり直すチャンスを与えられるのだが……というタイムリープものの亜種で、細かいエピソードの積み重ねが感動に結びついている。家族の対立と和解を感動的に描くことにかけては他に並ぶものなきフィリピン映画ならではの力強い感情の揺さぶりに、すっかりメロメロにされてしまった1本でした。
 ちなみに、本作が打ち立てた興収記録は、昨年末にフィリピンで公開された『Hello, Love, Again』があっさり塗り替えているのだけれど、こちらはまだ観る機会に恵まれていない。来年のマイベストワンは、きっとこの作品になるだろうと思っているのだけれど。

『A Very Good Girl』フィリピン
 いまやフィリピンを代表する名女優となったキャスリン・ベルナルドと、名脇役としてキャリアを積み重ねてきたドリー・デ・レオンの、迫力ある演技合戦が見どころとなっている作品。冷酷非情な女実業家と、復讐目的で取り入る謎の女の、虚々実々のかけひきに圧倒され、物語がどこに辿り着くのか夢中になって観てしまった。

『ノベンバー』エストニア
 おそらく、生まれて初めて観たエストニア映画だろう。神話、伝説が息づいている寒村が舞台で、「死者の日」には本当に死んだ先祖が家族のもとに帰ってくるし、疫病は女性の姿で村に入り込み豚の姿となって村人に襲いかかる。村には魔女がいて、村人の相談相手となっている。そうした不思議なエピソード、映像が次々と展開されるのだけれど、その映像がとにかく美しい。モノクロゆえの幻想的な映像が続き、ただただその映像に魅入られてしまった。なんとも言い難い不思議な映画だ。

『ビバリーヒルズ・コップ アクセル・フォーリー』アメリカ
 いまさら『ビバリーヒルズ・コップ』の新作かよ、と侮っていたのだけれど、しょっぱなの「ヒート・イズ・オン」が流れ出したところで一瞬にしてハートを持って行かれてしまう。そして、「30年ぶりなんだから、以前の作品にはなかったすごいことをやるぞ!」という無意味な力みはなく、かつて楽しかったあのシリーズを新作として再現するぞという基本コンセプトが実にいい。タガートは署長に出世していて、ローズウッドは私立探偵になっているけれど、相変わらずのタガートであり、相変わらずのローズウッドなのだ。このあたり、脚本家はちゃんとわかってくれているなあって感じ。これだけ楽しませてくれれば充分満足。

 といったところで10本になったのだけれど、次点としてフィリピンの『ボルテスⅤ レガシー』をあげておきたい。テレビシリーズの冒頭部分を劇場用に編集して公開したものなのだけれど、日本のテレビアニメを本気で実写化したフィリピンテレビ界に喝采を送りたい。よくぞ、月曜から金曜まで毎日放送するテレビドラマで、これだけのレベルの映像を創り上げたものと感動してしまった。

あと、日本の『侍タイムスリッパー』にも触れておきたい。もっとコメディ要素の強い映画かと思っていたのだけれど、いざ観てみると真っ向勝負の熱血人間ドラマで、シンプルに楽しむことができた。また、会津藩士を主人公にもってきた脚本がうまい。会津の人間がどういう運命を辿ったのかを知れば、会津藩士としてはそりゃ血を吐くほど悔しいだろうし、その感情がクライマックスを動かしていき、観ている僕らも嫌が応にも感情移入させられてしまう。いや、お見事。

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