2022 ベストテン よしだまさし

昨年観た作品から好きな作品をフィリピン映画以外で5本、フィリピン映画で5本を順不同でピックアップしてみました。フィリピン映画はすべて日本未公開の作品です(カッコ内の数字は、日本未公開作品は本国での公開年、日本公開作品は日本での公開年)。

『RRR』(インド/2022年)
 問答無用の超絶エンターテインメントで、2022年のベストワンは本作で決まり。

『消えゆく燈火』(香港/2022年)
 しみじみといい作品でした。シルビア・チャンが実にいい。もういい歳なんだけど、さりげなく可愛いんですよ。ほんとにもう、素晴らしい女優だと、それしか言葉が出てこない。
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(C)A Light Never Goes Out Limited

『呪詛』(台湾/2022年)
 昨年観た中で最も怖かった作品。この後味の悪さは、絶品です。

『トップガン マーヴェリック』(アメリカ/2022年)
 前作は、ストーリーなどなきに等しいにもかかわらず、映像だけでたっぷり酔わせてくれた作品だったのだけれど、まさかその続篇で泣かされようとは思いませんでした。

『グレイマン』(アメリカ/2022年)
 こんな凄いアクション映画を映画館のスクリーンではなくNetflixで観てしまうなんて、実にもったいない経験をしてしまった。これは映画館で観るべき作品でした。

『ANG BABAENG WALANG PAKIRAMDAM(無痛症の女)』(フィリピン/2021年)
 昨年は、ダリル・ヤップという新鋭監督との出会いが最大の収穫でありました。世の良識派の方々が眉をひそめるような題材を好んでとりあげていながら、映像センスは抜群にオシャレという、いままでのフィリピン映画で観たことのないタイプの監督なのです。
 本作は、先天性無痛症で、しかも子どもの頃から母親に感情を抑えるように育てられたせいで、痛みを感じることができないだけでなく、あらゆる感情というものも失ってしまった女性が、口唇裂でおかしなしゃべり方しかできない男性と旅をしていくという作品。あまりにも衝撃的なラストシーンに、しばし呆然としてしまいました。

『GLUTA』(フィリピン/2021年)
 続いて本作もダリル・ヤップ監督の作品。フィリピンの少数民族アエタ族の少女が大学のミスコンテストに挑戦するという物語。ちなみに、アエタ族というのは、背が低く、色が黒く、髪の毛がチリチリという、ミスコンからはほど遠い容貌の一族なのです。
 ミスコン優勝を夢見ながらも、アエタ族に生まれたというだけで貶められるヒロインの心情に、いたたまれない気持ちにさせられながらも、ひたすら明るい主人公の生き方に泣かされる作品でありました。

『A HARD DAY』(フィリピン/2021年)
 韓国映画『最後まで行く』のリメイク。車で人をひき殺してしまった刑事が、その時から何者かによる脅迫電話で追い詰められていくという物語。主人公を演じるディンドン・ダンテスと、悪徳刑事を演じるジョン・アルシリアという名優同士の激突でグイグイと見せられてしまう。本格的なハードボイルド映画の少ないフィリピンなのですが、本作は見事なまでのハードボイルド映画でした。

『ULAN(雨)』(フィリピン/2019年)
 なんとも不思議な雰囲気を持った映画でした。基本は若い女性の恋愛映画なのだけれど、その画面には延々と雨が降っている。そして、日常的な描写の中に、唐突に幻想的な映像がはさみこまれるのです。幼い主人公が森の中で神話の中の生物が結婚式をあげている場面に遭遇したり、小学校の同級生が割れた卵となってひっくり返ったり、祖母の白髪を抜いていると髪の毛の中から第3の眼が現れたりと、突然、びっくりするような映像が登場してくるのです。その幻想的な世界は、やがてクライマックスにおける驚愕の悲劇へと繋がっていくのですが……。
 フィリピン映画で、この手の幻想的な作品というのはちょっと珍しいのではないでしょうか。

『Island of Desire』(フィリピン/2022年)
 フィリピンでは幻想的な作品は少ないと言いながら、これまた幻想的な映像の連続する不思議な映画でした。交通事故で病院に運び込まれたヒロインが謎の島に辿り着いて、そこで不思議な体験を繰り返していくという作品。死にかけているヒロインが観ている幻想か、あるいは死にかけているヒロインが辿り着いた死後の世界の物語なのだろいうというのは、観ているこちらにもわかるのだけれど、この意味不明の物語がいったいどこに行き着くのかという興味でグイグイとラストシーンまで引っ張られてしまいます。監督はベテランのジョエル・ラマンガン。

 昨年はこうした新作の他に、ウォルター・ヒル監督やメル・ブルックス監督などの古い作品をあれこれと見直していたのですが、やはり面白い映画は何度観ても面白いですね。昨年の裏ベストテンは、何度観ても素敵なこんな作品たちでした。


『カサブランカ』(アメリカ/1946年)
『プロデューサーズ』(アメリカ/1967年)
『激突!』(アメリカ/1973年)
『ヘルハウス』(アメリカ/1974年)
『スローターハウス5』(アメリカ/1975年)
『ブレージング・サドル』(アメリカ/1976年)
『ウォリアーズ』(アメリカ/1979年)
『ストリート・オブ・ファイヤー』(アメリカ/1984年)
『Baby Tsina』(フィリピン/1984年)
『クロスロード』(アメリカ/1987年)

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