【2022年映画ベストテン:総合】じょーい小川

1位:『バルド、偽りの記録と一握りの真実』
2位:『リコリス・ピザ』
3位:『ウエスト・サイド・ストーリー』
4位:『かがみの孤城』
5位:『もっと超越した所へ。』
6位:『そばかす』
7位:『英雄の証明』
8位:『ガンパウダー・ミルクシェイク』
9位:『ボイリング・ポイント 沸騰』
10位:『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』


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(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

今年はほぼ途切れずに毎週4〜6本ぐらい新作映画と向き合い、時には複数回鑑賞したら220本の新作映画を見た。ここ最近では持ち直した数である。

一旦は年間ベストテンを12月5日の段階で作ったが、12月16日から公開の三浦透子主演映画『そばかす』と12月23日から公開した『かがみの孤城』をベストテン上位入れたので、ベストテンに残していた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』とロマン・ポランスキー監督作品『オフィサー・アンド・スパイ』を泣く泣く落とした。

今回1位から5位の作品はどれもスーパー傑作で、どれも2020年代レベルで語りたい。上半期ダントツだった3位のスピルバーグの『ウエスト・サイド・ストーリー』はミュージカル映画が多かった2021年に公開したとしてもベストテン上位だっただろうし、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『リコリス・ピザ』のうねりにうねった70年代青春映画も2020年代の『アメリカン・グラフィティ』で暫定的に1位になったが、それをさらに超えたのが2020年代の『8 1/2』にして究極のイニャリトゥ映画『バルド、偽りの記録と一握りの真実』だった。夢と現実、生と死、アメリカとメキシコ、そんな境界線、「バルド=中陰」を描いた完璧な映画。まさかここに来て2007年のマイベストの『バベル』を超えるイニャリトゥ映画が来るとは思わなかったし、やはりアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが世界最高峰の映画作家であることを再認識した。

日本映画もかなり頑張りを見せた年だった。特に5位の『もっと超越した所へ。』には驚かされた。2020年に公開した『タイトル、拒絶』と同様に評判高い舞台劇を元にした作品は今後も要チェック。そして、4位の原恵一監督の『かがみの孤城』のクオリティーには驚かされ、ベストテンを壊した元にもなった。個人的にベストテンにアニメ映画が入るのは2006年の今敏監督作品『パプリカ』以来だったりする。

それで8位にどうしてもベストテンに入れたかった『ガンパウダー・ミルクシェイク』を入れたので、ヨーロッパの映画はイギリス映画『ボイリング・ポイント 沸騰』のみ。惜しかったのはロマン・ポランスキー監督作品『オフィサー・アンド・スパイ』とアレックス・ガーランド監督作品『MEN 同じ顔の男たち』。特に後者は、ベストテン内に同じ12月公開の作品があったから落としたようなものだった。

もう一つ、2022年のベストテンで特筆したいのは5位の『もっと超越した所へ。』、6位の『そばかす』、8位の『ガンパウダー・ミルクシェイク』、9位の『ボイリング・ポイント 沸騰』で、これらは監督作品1本から3本ぐらいのキャリアが浅い監督の作品がベストテンに食い込んだこと。他がアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ポール・トーマス・アンダーソン、スティーヴン・スピルバーグ、原恵一、アスガー・ファルハディ、ウェス・アンダーソンといった世界最高峰のベテランや超ベテラン監督の作品だったことを考えると、こうした既存の名匠がしっかりした作品を出しながらも次の世代が出てきている。

2023年に入ると早速月末にマーティン・マクドナー監督の『イニシェリン島の精霊』や2月にリューベン・オストルンド監督の『逆転のトライアングル』、ダニエルズの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』といった新世代の作品の公開が控えている。

これに超ベテランのスピルバーグの新作『フェイブルマンズ』にアジア系ベテラン勢のパク・チャヌクの『別れる決心』やチャン・イーモウの『崖上のスパイ』がどこまで響くか?

2023年も骨の髄まで楽しめる、面白い映画に出逢いたい。

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