2020年 マイ・シネマ ベスト10 飯田 眞由美

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COVID-19は、故郷の母に会うことも叶わなくし、その旅費を生む仕事の疲れを癒す唯一の楽しみの映画鑑賞を奪った。年が明けた今、映画館が閉鎖されていることはなく、大ヒットのアニメ映画は観客動員数を書き換えたほどだが、糖尿病を持つ夫と暮らす上では、我慢できるものは堪えるしかない。
嘆いてばかりいても仕様がないと、テレビやネット配信で映画に触れられたのは、もう秋だった。公開時に見逃した作品や、なんだこれはとドン引きしそうなタイトルを付けられた作品を選んで観てみた。そんな中からベスト10をチョイス。

第10位、『ペイン 魂の叫び』。 原題は〝Leave″。カタカナ1語なら『リーブ』でいいんじゃないのと思った内容。絡みあった複雑なストーリーのようでいて、実はシンプルに人間の恐れを描いた作品。抽象的な感想はネタバレ回避の定石です。

第9位は『好きにならずにいられない』。原題は〝Fusi”で主人公の名前。アイスランド映画。英語のタイトルもあり、こちらは〝Virgin Mountain″。主人公のフーシの仕事は空港の荷物係。が、彼は飛行機に乗ったことがない。そんな彼がまずは一歩を踏み出して行く情景からすれば、英題は悪くない。童貞であろう巨漢の彼を現わしているようでもある。作品自体に弾むような明るさはないのに、『好きにならずにいられない』って、どこにフォーカスすればこのタイトルになるのだろう。

第8位には『メイジーの瞳』、2014年の作品。親の離婚、これは親が決めたこと、親権や養育の期間は裁判所が決定、大人がメイジーの居場所を決めている。ラストに初めてメイジーがメイジーの欲しい思いをつぶやく。やっとほっとできた。

第7位は『同じ遺伝子の3人の他人』。2018年に発表されたドキュメンタリー。三つ子が親の都合でバラバラに養子に出されて、偶然がきっかけで三つ子と分かり三人で社会に出たことの話かと思ったのだが、秘密裡に実験観察が行われていたという告発で幕が下りる。フィクションではないが故に、その罪の重さが伝わってくる。

第6位にやはりドキュメンタリー作品の『フリーソロ』を。山岳ドキュメンタリーで高い評価を得た『メルー』の監督が撮ったもの。安全装置なし素手で絶壁を登るフリーソロの完遂を追った作品。俳優さんではないのに、登場人物はみなさん美形で、面食いの私はその点も満足だった。

第5位『ゲット アウト』。じわじわとした感触で人種差別を恐怖の域で表現した作品。Black Lives Matter運動は連綿と蔓延る怒りが生み出したのだと納得。

第4位『私がクマに切れた理由』は、クマの縫いぐるみを相手に怒ったものではありません。クマさんに隠しカメラをつけて子守りの私を監視してたから。原題は〝The Nanny Diaries”、確かにこのままだと味気ないかも。

第3位に『ゾンビの中心で、愛をさけぶ』、コロナ禍の現在にジャストミートしたゾンビ映画。いや恋愛物か。このタイトルは罪だ。なかなかの出来の作品なのだから。このタイトルで観るのを止めた人も多いのではないか。もったいない、もったいない。原題は“Zoo”。極めてシンプルかつ的を得ている。

第2位は『フランシス・ハ』。やっと観た、2012年公開の映画。このタイトルは何を意味しているのかと思いつつ観始めたのだが、そのうち、そんな疑問のことも忘れて主人公から目が離せなくなり、ラストで「あ、それでこのタイトルなのね」と爽快感を手にできる。こういう作品、好きだ。

栄えある第1位は『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』。もう勘弁して欲しい。何の恨みがあってこんなタイトルにしたのか。勿論、これは今は亡き名女優市原悦子さんの『家政婦は見た』シリーズを援用したものだろう。しかしだ、この作品は、自分を見失うことなく生きて行こうとする女性の今を語った物であり、セレブ家庭のスキャンダルを覗くストーリーとはどこも一致しないのだ。 “Starlet”が原題。主人公が大事にしているチワワの名前がスターレット。

3位のゾンビ、1位のチワワと仰天の日本題を付けられた2作品だが、まともなタイトルで落ち着いていたら、これほどの掘り出し物感は得られなかったかもしれない。
2021年は映画館で、たくさん観てそこからベスト10を選びたい。心底そう願う。

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