2017年 ベスト映画 米原 弘子

昨年映画館で鑑賞した153本の中から邦画、洋画5本ずつ選出。

【邦画】
『あゝ、荒野 前篇』
ヤン・イクチュンと菅田将暉の組み合わせの妙に尽きる。葛藤を抱えた二人が出会いボクシングが介在することでそれぞれの一途さ、純粋さが炙り出されていく。菅田はどんな場面でも育ちの良さが出るというか下品にならないところがよい。アドリブとわかるシーンも楽しい。

『あゝ、荒野 後篇』
前篇を凌ぐ傑作。映画の観客からボクシングのギャラリーの一人となり、手に汗握り目を覆い叫び、新次に健二に、そしてヤン・イクチュンに菅田将暉に泣く。生きる、誰かと繋がる、そして死ぬ。魂のエネルギーが集約されむき出しの肉体からほとばしる。荒野のような世界が愛おしく見える。

『幼な子われらに生まれ』
血の繋がらない男親と思春期突入の娘との精神的距離が広がっていく様子は見ていてヒリヒリ。ドキュメンタリー風の映像も隣人のいざこざを覗き見しているような気分に。浅野忠信演じる不器用な父親が秀逸。悪い母親ではないのだが鬱陶しくてイラッとくる妻役田中麗奈の上手さに舌を巻く。

『彼らが本気で編むときは』
トランスジェンダーを主人公に、家族や性別を超えた人と人との繋がりや他者に対する思いやりを描き出した良作で途中から涙が止まらなくなってしまった。俳優陣が見事で主演の生田斗真はもちろん母親を慈しむ覚悟の顔が素晴らしかった柿原りんかちゃん、将来が楽しみな子役。

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
詩集が原作という異色の作品。寓話的要素が強くなる後半部分が賛否の分かれるところだが心にそっとしまっておきたい台詞がたくさんあり、私は凄く良かったと思う。何が起こるかわからない明日を生きてみようってね。濡れ場の無い池松壮亮も良い。

【洋画】
『パターソン』
どうでもいい情報が氾濫する中、五感を研ぎ澄まし自分にとって本当に大切なものを取りこぼすことなく日常を丁寧に生きたいと思った。夫婦映画デートの後、アダム・ドライバーの「毎週行こうね」には胸キュン。ダメわんこも可愛いし永瀬正敏の存在感も素晴らしい。疲れた時に見直したい作品。

『ムーンライト』
血の繋がりやセクシャリティに関係なく誰かと心を通わす、苦しい時に肩を抱いてもらう、自分を認めてもらう、そんな永遠のひとときが心にあれば人間は生きていける。アート的な映像と音楽にも感情が揺さぶられ観終わった後しばらくボーッとしてしまった。そして暖かさに満ちた。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
取り返しのつかない過ちを犯した男。冷たい冬の海のように人を寄せ付けることを拒んでいた彼が新たな「役割」を得ることで前に進むキッカケを作る。ハッピーエンドとはいえないが時の流れが静かに心の傷を癒してくれることを願う。染み入る傑作。

『光をくれた人』
「逃げ続けたが罪に追いつかれてしまった」話。責められる人間が誰もいないだけに時代や人との巡り合わせがもたらすそれぞれの苦悩が切なすぎる。ヤヌスの名前の通り人を包み込む暖かさと寄せ付けない冷たさ両面を見せる孤島と海の美しさ、そして何より主となる男女3人の演技は見もの。

『メッセージ』
鑑賞後、どう言っていいかわからないほど感動に浸ってしまった。ぐいぐいと物語に引き込まれ気が付くとその宇宙観、人生観に打ちのめされていた。生きることに失敗も間違いもなく、過去も未来も生も死もすべて受け入れ味わい尽くすだけ。人生は素晴らしい。

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