2017年・私の好きな映画ベストテン 菅沼正子

1 わたしは、ダニエル・ブレイク
2 ラ・ラ・ランド
3 マンチェスター・バイ・ザ・シー
4 ドリーム
5 ダンケルク
6 残像
7 希望のかなた
8 ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命
9 僕のワンダフル・ライフ
10 立ち去った女


1『わたしは、ダニエル・ブレイク』 社会的弱者の目線で、社会の不条理をあぶり出していくケン・ローチ監督。今回のテーマは生活保護。医師から就労は困難といわれた59歳の大工ダニエル・ブレイク。国に生活支援を求めるが、その手続きの複雑さ、冷徹さ。PCも思うように使えず。ハローワークの掲示板に<わたしは、ダニエル・ブレイク>から始まる抗議文は、心の痛みを伴って忘れられない名シーン。

2『ラ・ラ・ランド』 鑑賞後は号泣。これほど泣いた作品は近年には珍しい。オープニングは『ウエスト・サイド物語』の乗りではじけているが、夢を見て、夢を追いかけ、夢をつかんだものの、気が付けば愛は失っていたという内容。得るものと失うもの。幸福はどんな物差しで計る?監督はデイミアン・チャゼル。

3『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 タイトルのマンチェスター・バイ・ザ・シーは、ボストンの北東に位置する平凡な港町。訳あって故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーを捨てた主人公(ケイシー・アフレック)が、兄の死をきっかけに故郷に戻り、過去の悲劇を振り返るというストーリー。泣ける、ジーンと泣ける。砂浜に打ち寄せるさざ波のように、感情の波が揺れる。監督はケネス・ロナーガン。

4『ドリーム』 1960年代初頭。NASAのロケット打ち上げ計画も初期の時代。現代ほどコンピュータは発達していない。そういう時代にNASAの頭脳として尽力した黒人女性3人の偉業を描く実話。天文学的計算能力にはびっくりだが、それ以上に私が感動したのは彼女たちの人種差別との闘いである。科学的にはロケットの打ち上げというドリームはかなえられ、それから70後の今では、宇宙に数か月も滞在できるようになったのに、人類みな平等のドリームはいまだに変わってない。なぜ?

5『ダンケルク』 1940年5月、ナチス・ドイツの猛威は北欧諸国を次々に侵略、まもなくフランスも落とそうという勢い。フランス北部の港町ダンケルクに追い詰められて苦戦する英・仏連合軍。このときイギリス首相チャーチルが決断した撤退作戦。「ダンケルクの奇跡」と語り継がれるその全貌を描く。監督はクリストファー・ノーラン。ここに至るまでの史実は、3月30日公開の『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』の鑑賞を勧める。魂を揺さぶられる感動の映画だ。

6『残像』 第二次世界大戦後、ソ連の影響下に置かれたポーランド。スターリン主義に抵抗して、自らの主張を貫いた実在の画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの孤独な人生を描く。同じような環境で映画を作り続けた巨匠アンジェイ・ワイダ監督の遺作。タイトルの『残像』はストゥシェミンスキの作品名でもある。 

7『希望のかなた』 難民問題に一石を投じた秀作。内戦で家も家族も失ったシリアの男性が、ヨーロッパへ逃れ、差別や暴力にさらされながら、いくつもの国境を越え、戦争のないフィンランドに密入国。難民申請するも却下される。送還を恐れる男性に手を差し伸べる初老のおじさんがいて……。セリフは少ないが、画像は雄弁。ユーモアとアイロニーが巧み。ヨーロッパ・中東の現実の苦悩を浮き彫りにしたラストシーンは衝撃。アキ・カウリスマキ監督作品。

8『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』 ホロコーストに抵抗した命の輝きの美しさ。ユダヤ人300名の命を救った実話。1939年、秋。ポーランド・ワルシャワに侵攻してきたナチス・ドイツ。ヨーロッパ最大級のワルシャワ動物園の希少動物たちが爆撃の犠牲になっていく。管理人夫婦は動物を守るさまざまな工夫を尽くし、地下倉庫にユダヤ人をかくまい、多くの命を救ったのである。この動物園は今も開園しているという。行ってみたい。監督はニキ・カーロ。

9『僕のワンダフル・ライフ』 ゴールデン・レトリバーと飼い主のラブストーリー。タイトルの<僕>は犬あり、飼い主でもある。犬の寿命は人間より短いから、少年が成長して大人になるまで犬は何回か生まれ変わる。犬にも輪廻転生があるらしい。シェパード、コーギーと生まれ変わり、何度目かの出会いはゴールデンに戻っている。動物たちに癒される。監督=ラッセ・ハルストレム。

10『立ち去った女』 冤罪で30年も服役した女が、自分を陥れた昔の恋人への復習の旅に出る。人間の善と悪をあぶり出す。なじみのないフィリピン映画。4時間近い長尺なのに疲れない。ラヴ・ディアス監督の手腕。
 テンからは漏れても好きな作品。順不同。『未来よこんにちは』『ムーンライト』『少女ファニーと運命の旅』『エル』『ボブという名の猫』『オン・ザ・ミルキー・ロード』『サーミの血』『ダンシング・ベートーヴェン』。

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