TUFS Cinemaイラン映画特集『ウォーデン 消えた死刑囚』(2/18)

tufscinema240218.jpg

東京外国語大学TUFS Cinema 
イラン映画特集『ウォーデン 消えた死刑囚』
https://www.tufs.ac.jp/event/2023/240218_c01.html

日時:2024年2月18日(日)14:00開映(13:40開場、16:30終了予定 )
会場:東京外国語大学 アゴラ・グローバル プロメテウス・ホール
https://wp.tufs.ac.jp/tufscinema/contact/

プログラム
映画『ウォーデン 消えた死刑囚』本編上映(91分)

上映後トーク 森島 聡 (東京外国語大学非常勤講師)
司会 佐々木 あや乃(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)

★入場無料、事前登録制(先着500名)、一般公開

事前登録フォーム 
https://sanda.tufs.ac.jp/event/tc240218form/
*会場での参加登録も可能(満席の場合、事前登録者を優先)


主催:東京外国語大学TUFS Cinema
共催:イラン・イスラム共和国大使館 イラン文化センター
協力:東京外国語大学多言語多文化共生センター

このイベントは、東京外国語大学 建学150周年記念タイアップイベントです。


『ウォーデン 消えた死刑囚』作品紹介
監督・脚本:ニーマー・ジャヴィディ(『メルボルン』)
出演者:ナヴィード・モハンマドザーデ(『ジャスト6.5』)、パリナーズ・イザドヤール
2019年/イラン/91分/ペルシア語/日本語字幕
原題: Sorkh pūst
受賞歴:イラン映画賞作品賞・撮影賞・主演男優賞・ヴィジュアルエフェクト賞
イラン映画批評家&脚本家賞・監督賞・脚本賞・美術賞・創造的演技賞
ファジル国際映画祭 審査員特別賞

あらすじ
革命以前の1966年、イラン南部の刑務所は、新空港建設のため立ち退くことになった。所長のヤーヘド少佐は、新刑務所への囚人移送任務を実行していた。任務達成後に大きな出世を約束され、それは彼にとって難しいことではないはずだった。ところが一人の死刑囚が行方不明との報告が届く。所外への脱走はあり得ないと判断した少佐は所内の徹底した捜索を決意する。事情を聞くために死刑囚を担当していたソーシャルワーカーを呼び寄せるが、美しく聡明な彼女に以前から少佐は惹かれていた。

本作について
本作品は、イラン・イスラム革命以前の時代の刑務所を舞台としている。成人女性の外出にはスカーフやチャードルなどの着用を求められる、今日とは異なる時代のイラン社会を描くにあたり、登場する女性たちが帽子や民族衣装を身にまとうことで違和感ない演出となっている。1978-9年の革命から40年を経て、このような娯楽ミステリー作品を受容する素地が養われてきたといえよう。

原題を直訳すれば「赤肌」となるが、これは行方不明となった死刑囚を指している。ストーリーはこの死刑囚の存在が鍵となる。その人柄や死刑囚となった理由が明かされる過程で、所長にとって単なる任務だったものが次第に切実な問題へと変化してゆく。そこにはイラン人が思い描く、権力と義理人情の関係が鮮明に描き出されている。(森島 聡)

★シネジャ作品紹介:http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/479345764.html



◆TUFS Cinema その他の上映会予定はこちらで!
https://wp.tufs.ac.jp/tufscinema/screening-schedule#Recently


posted by sakiko at 11:35Comment(0)上映会

【国立映画アーカイブ】上映企画  日本の女性映画人(2)――1970-1980年代

【国立映画アーカイブ】上映企画
日本の女性映画人(2)――1970-1980年代
英題: Women Who Made Japanese Cinema [Part 2]: From the 1970s to the 1980s

会期: 2024年2月6日(火)―3月24日(日)※月曜休館

会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]

公式サイト: https://www.nfaj.go.jp/exhibition/women202312/

日本映画の歴史において、監督のみならず多様な職域で女性映画人たちが手腕を発揮してきました。2022年度に開催された「日本の女性映画人(1)――無声映画期から1960年代まで」に続き、 1970-80年代に生じた映画界の構造変化の中で躍進した女性映画人たちを取り上げ、監督・脚本・製作などの分野に着目して、劇映画からドキュメンタリーまで計74作品(47プログラム)が上映されます 。

ご案内文より
*********
1970年代以降は独立プロを基盤に、女性監督たちが活路を切り拓いていきます。女優出身の 左幸子『遠い一本の道』 (1977)や 宮城まり子『ねむの木の詩がきこえる』 (1977)は社会運動に根差した題材で大きな反響を呼び、自主製作の動向から頭角を現した 鵞樹丸 は 『わらじ片っぽ』 (1976)で前衛的表現を開拓しました。1980年代にかけて続々と女性が監督を手がけるようになり、作品の多様化が顕著になっていきます。

 一方、撮影所体制がゆらぐ中で、ジャンル映画において女性脚本家たちが台頭してきたこともこの時期の特徴です。 『メカゴジラの逆襲』 (1975)の 高山由紀子 や 『ビー・バップ・ハイスクール』 (1985)の 那須真知子 などが娯楽映画に新風を吹き込みました。

 さらに今回は小特集として、 記録映画作家を取り上げ、音声を画と対等に捉えて革新的なドキュメンタリーを打ち出した時枝俊江と女性史を語り継ぐ作品群を手がけた藤原智子の業績を再評価します 。

 日本映画の転換期に新機軸をもたらした女性映画人たちの足跡を振り返ることにより、日本映画史の再考につながる新たな視座が切り拓かれることを願っております。

*見どころ*

▼女性監督作品の多様化 前衛的表現を開拓した自主映画作家・鵞樹丸の発見!
自主製作の動向から頭角を現した 鵞樹丸 (本名・村上靖子)は、 『わらじ片っぽ』 (1976)によって女性の自由と抑圧をテーマに時空を交錯させて描き、前衛的表現を開拓しました。壮大なスケールの自主製作に取り組み、インディペンデント作家としての先駆的作品となりました。日本映画史のミッシング・リンクとも位置づけられる重要な発掘にご注目ください。

▼ジャンル映画にも活躍の場を広げた女性脚本家たち
1950-60年代には文芸映画の隆盛を背景として水木洋子や田中澄江などが健筆をふるいましたが、その後、撮影所体制のゆらぐ中で、時代劇や特撮映画も含めて幅広いジャンル映画にも女性脚本家が活躍の場を広げました。娯楽映画に新風を吹き込んだ 高山由紀子 や 那須真知子 をはじめ、東宝青春映画路線で活躍した 重森孝子 や、NHK大河ドラマ初の女性脚本家となった 大野靖子 などの作品を上映します。

▼ドキュメンタリー作家の小特集―I時枝俊江、II藤原智子
女性監督たちが実績を積み重ねてきた記録映画では、様々な秀作群が送り出されてきました。岩波映画製作所で羽田澄子と並んで活躍した 時枝俊江 は、音声を画と対等に捉えて革新的なドキュメンタリーを打ち出しました。ライフワークとなった幼児教育を扱った作品群をはじめ、21作品の上映によって幅広い業績を再評価します。また、 藤原智子 は日本の女性史について多面的にアプローチした骨太な記録映画を手がけました(7作品を上映)。


上映作品(74作品)
◆監督◆
鵞樹丸(村上靖子)『 わらじ片っぽ 』(1976)『 きこぱたとん 』(1993)
宮城まり子『 ねむの木の詩がきこえる 』(1977)
左幸子『 遠い一本の道 』(1977)
沖山秀子/珠瑠美『 グレープフルーツのような女 性乱の日々 』(1981)『 熟女スワップ若妻レズ 乱行恥態 』(1994)
栗崎碧『 曽根崎心中 』(1981)
倉岡明子『 六ヶ所人間記 』(1985)
槙坪夛鶴子『 若人よ いのちと愛のメッセージ 』(1987)
浜野佐知『 ダブルEカップ 完熟 』(1988)『 (生)性体験 世にもみだらな女たち 』(1989)
熊谷博子『 よみがえれカレーズ 』(1989)『 映画をつくる女性たち 』(2004)

◆脚本家◆
宮内婦貴子『 その人は女教師 』(1970)
服部佳『 新座頭市物語 笠間の血祭り 』(1973)
重森孝子『 二十歳の原点 』(1973)
大野靖子『 沖田総司 』(1974)
高山由紀子『 メカゴジラの逆襲 』(1975)
鹿水晶子/木村智美『 団地妻 二人だけの夜 』(1978)『 イヴちゃんの花びら 』(1984)
田中晶子『 ダイアモンドは傷つかない 』(1982)
筒井ともみ『 それから 』(1985)
那須真知子『 ビー・バップ・ハイスクール 』(1985)

◆製作者◆
小林佐智子『 極私的エロス・恋歌1974 』(1974)
原田美枝子『 ミスター・ミセス・ミス・ロンリー 』(1980)
髙野悦子『 恋の浮島 』(1982)
大林恭子『 廃市 』(1984)
朝倉大介(佐藤啓子)『 人妻の悶え ザ・不倫 』(1981)『 変態家族 兄貴の嫁さん 』(1984)
飯野久『 黒い雨 』(1989)
岡本みね子『 大誘拐 RAINBOW KIDS 』(1991)

◆美術監督◆
朝倉摂『 修羅 』(1971)
菊川芳江『 四畳半襖の裏張り 』(1973)『 江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者 』(1976)
星埜恵子『 ウンタマギルー 』(1989)

◆実験映画◆
出光真子『 AT YUKIGAYA TWO 』(1974)『 父の情景 』(1981)『 たわむれときまぐれと 』(1984)『 ざわめきのもとで 』(1985)『 加恵、女の子でしょ! 』(1996)
九條映子/田中未知『 迷宮譚 』(1975)『 疱瘡譚 』(1975)『 審判 』(1975)

◆アニメーション◆
『 ピカドン 』(1978)『 水仙月の四日 』(1990)『 火の鳥2772 愛のコスモゾーン 』(1980)


【小特集I 時枝俊江】
『 町の政治 べんきょうするお母さん 』(1957)『 This is TOKYO 』(1960)『 新しいガス源をもとめて 』(1965)『 夜明けの国 』(1967)
『 文教の歩みをたずねて 文京の文化財 』(1975)『 建造物との対話 』(1980)『 ぶんきょうゆかりの文人たち 観潮楼をめぐって 』(1988)『 越後上布 』(1980-81)『 歌舞伎の魅力 舞台 』(1981)『 ともだち 』(1961)
『 ケンちゃんたちの音楽修行 ヤマハ音楽教室四才児初期の記録 』(1965)
『 学級集団の成長 ある教師の保育日誌から 』(1977)
『 子どもをみる目 ある保育者の実践記録から 』(1978)
『 光った水とろうよ 幼児の知的好奇心をさぐる 』(1979)
『 こころをひらく 育ちあいをもとめる保育 』(1981)
『 みどりぐみ こ・う・じ・げ・ん・ば 幼児の自己充実をもとめて 』(1982)
『 みる、きく、たしかめる 創りだす自分のせかい 』(1983)
『 いいこといいこと考えた 遊びでひろがる数量の世界 』(1985)
『 病院はきらいだ 老人の在宅ケアを支えるネットワーク 』(1991)
『 農民とともに 地域医療にとりくみ50年 』(1995)
『 地域をつむぐ 佐久総合病院小海町診療所から 』(1996)


【小特集II 藤原智子】
『 歌舞伎の立廻り 』(1981)『 歌舞伎俳優研修教材シリーズ No.8 歌舞伎の後見 』(1992)『 誕生 その歓び 』(1986)『 杉の子たちの50年 学童疎開から明日へのメッセージ 』(1995)『 ルイズ その旅立ち 』(1997)『 伝説の舞姫 崔承喜 金梅子が追う民族の心 』(2000)『 ベアテの贈りもの 』(2004)

2023ベストテン 菅沼正子

ennio.jpg
(C)2021 Piano b produzioni, gaga, potemkino, terras

外国映画の部

1,モリコーネ 映画が恋した音楽家
 メロディの向こうに映像が見える素晴しい音楽。あのメロディ、あのシーン、あのスターの名演技。次々に蘇るこの幸せ!、映画ファンにはたまらない。生涯どのくらい提供してくれただろうか、エンニオ・モリコーネ。1960年代に大流行したマカロニ・ウエスタン。哀愁を帯びたオペラ的なあのメロディはクリント・イーストウッドのイメージ。

2,エンドロールのつづき
 監督自身の実話から生まれた感動作。チャイ売り少年が恋に落ちたのは映画だった。鑑賞後はチャイでも飲みながら、自分の希望や人生を見つめ直すのも一興。

3,屋根の上のバイオリン弾き物語
 「屋根の上のバイオリン弾き」のバックストーリーを追ったドキュメンタリー。<サンライズ・サンセット……>と明日の希望を歌うあの名曲。政情の悪化でユダヤ人は国外追放になり、1家の後ろをバイオリン弾きもついて行く、この映像が忘れられない。現在の中東の争いも考えてしまうが、私の最大の願いは<決して戦争をしてはいけない>ということ。

4,マルセル 靴をはいた小さな貝
 おとぎ話のような心地よい感覚がたまらない。人類世界中分け隔てなく皆仲良くしようというメッセージ伝わってくる。

5,ナチスに仕掛けたチェスゲーム
 ヒトラーがドイツとオーストリアを併合した日、公証人は監禁される。精神的虐待を受けながらも、チェスのルールブックを暗唱、船上で行われているチェス大会を見守るが……。

6,私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?
 タイトルロールのモーリーン・カーニーは世界最大の原子力企業アレバ労働組合の代表。アレバとフランス電力会社(EDF)が、機密性の高い技術を中国に移転させ原発を造らせようとしていることを知ったモーリーンはこの件を内部告発して…………

7,ティル
社会的なメッセージを歌にするボブ・ディランも歌った。公民権問題である。(怒り)。息子を愛する母親の愛と正義の実話。タイトルはその母と息子の姓。いまだに黒人蔑視の陰惨な社会に立ち向かう母の勇気に励まされ、感動が全身を走る。

8,TAR/ター
ベルリン・フィルで女性として初めて主席指揮者に任命されたター。最近その日々が何となく不思議。思いがけない陰謀が裏で動いている。ケイト・ブランシェットの独壇場。

9,アフター・ヤン
人間とは何か、ロボットとは何か、人間とロボットの違いは?などの問いかけに対して、家族の情愛や人間らしい生き方について探求していく姿勢に胸を打たれる。AIが社会を切り盛りして、人間不要になったらどうする?

10,aftersun/アフターサン
親の心子知らずというが、父と同じ年齢になった娘ソフィが、あの頃の父の心が痛いほど分かる、という話。

日本映画の部

1,PERFECT DAYS
平凡な小市民の生き方を描いて紛れもない感動作。主演の役所広司がカンヌ映画祭で最優秀男優賞受賞。監督のヴイム・ヴェンダースは<彼こそが俳優である>と絶賛。この主人公のように、1日1日を大切にしたい。同じ日は1日としてなく、見上げれば空の色も雲の動きも木の葉さえ、その風情は昨日とは違う。毎日が新しい日なのである。

2,土を喰らう十二ヵ月
こんな生活ができたら……と、だれもが望むことだろう。わが家の庭で四季を感じられるなんて素晴らしい。私も軒下に日よけ代わりにゴーヤをつくるのが毎年楽しみ。

3,銀河鉄道の父
一筋縄ではいかない宮沢家の物語。ありすぎるほどの家族愛が伝わってくる。

4,春に散る
人生を取り戻す力を与えてくれる映画。私の大好きな佐藤浩市主演。

5,逃げ切れた夢
人生のターニングポイントを迎えた中年男性。妻は燃えてくれないし、娘はスマホに夢中だし、どうすればいい?

6,こんにちは、母さん
山田洋次監督の91歳にして90本目の作品。スカイツリーを見上げる東京下町の人情が身にしみる。

7,魔女の香水

8,有り、触れた、未来
命と向き合う複数の実例の物語を通し、人々が支え合うことの尊さを描く。

9,J005311
タイトルは光ることなく浮遊していた二つの星が、奇跡とも呼ばれる確率で衝突し、再び輝きだした星をもとに名づけられたとのこと。
居場所を見つけられずさまよい世間に取り残された孤独感いっぱい。

10,水は海に向かって流れる
もう恋なんかしたくない、という26歳のOL。そんな彼女に思いをはぜるのは年の差10歳の高校生。主題歌はスピッツ。
本作のために書き下ろした新曲は<ときめきpart 1>。

2023年 ベスト映画  米原 弘子

egoist.jpg
(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

昨年映画館で鑑賞した85本の中から邦画、外国映画10本ずつ選出しました。

【邦画】

①窓ぎわのトットちゃん
ちょうど親世代の徹子さん、子供たちのイキイキとした動作や会話の細やかな描写に両親の姿が重なり胸がいっぱいに。年月を経て二人とも他界した今、社会情勢が当時とそれほど変わっていない、むしろ悪い方に向かっていることに戦慄。泣いた。良かった。

②リバー、流れないでよ
老舗旅館で繰り返される2分間のタイムループ。登場人物の記憶が途切れないことで起こるドタバタを毎回ワンカットで撮るというアイデアの素晴らしさ。2分という時間を視覚化したともいえる。笑いながらそれぞれの人生も垣間見える。冬の京都の神秘的風景と相まって大満足の一本。

③福田村事件
たかだか100年前の出来事なのだ。その間に人間の集団心理が変わるとは思えない。もしかすると明日私が(どちらの立場にせよ)彼らになるかもしれない。決して他人事ではなく目をそむけてはいけないと思いつつその場から逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。役者陣が見事。

④エゴイスト
浩輔と龍太の笑顔を見ていると彼らの幸せがいつまでも続くよう願うしかなく、と同時にこの関係が終わりを迎える予感に胸が苦しくなった。思いがけない展開から血のつながりを超えた家族の構築へと物語は行き着く。無償の愛と日常の尊さを実感する。

⑤春に散る
何を選択するのが正解か誰にもわからない状況で、たとえ体がボロボロになろうとその一瞬にすべてを賭ける美しさ。ボクシング映画に人々が惹かれる理由がそこにあると思った。主演の横浜流星はなんて凄い役者なのだろう。ほとんどノーメイクで一本芯が通った女性を演じた橋本環奈は新境地を開いたのでは。

⑥ミンナのウタ
GENERATIONSのメンバーが本人役で出演。呪いのカセットテープがもたらす怪奇現象に巻き込まれる。怖くて面白くて期待以上だった。特に途中の白日夢か現実か、こちらも魔界に引き込まれそうになるあるシーンが秀逸で、恐怖と微かな好奇心を刺激して鳥肌。

⑦正欲
正しさとは?普通とは?マイノリティの嗜好や欲望・衝動を言語化視覚化するとこうなるのかと腑に落ちた。というか何かしら誰でも持っている感覚なのではないかとも。普通側に立つ者が振りかざす常識と正義を体現した稲垣吾郎の演技に舌を巻く。

➇仕掛人・藤枝梅安
行燈の薄暗い中、鍋を囲みながら「これが最後の飯かもしれん」と語り合う男二人の全身からにじみ出る悲哀と色気にクラクラ。除夜の鐘が鳴り響く大晦日、こたつで眠る彦次郎に羽織をかけ一人縁側で妹を偲ぶ梅安、、というカットだけで観た甲斐があったというもの。極上の時代劇。

⑨アンダーカレント
人の心は計り知れなくてお互いわかりあえるはずがなく、だからこそ心が触れ合う一瞬を求めて人は生きているのかもしれない。そんな思いを抱きながら観ていた。真木よう子、井浦新、リリーフランキーほか役者たちの演技が心地よい。優しくありたいと思った。

⑩最後まで行く
オリジナル韓国版は未見。岡田准一扮する刑事がのっぴきならない状況にどんどん追い込まれていく姿に息も絶え絶え、大変面白かった。途中の死体についてのミスリードも効果的。サイコパス綾野剛も凄いし磯村隼人の死体っぷりも素晴らしい。どなたか駿河太郎の心配をしてあげてほしかった(笑)

【外国語映画】

①対峙
高校銃乱射事件の加害者家族と被害者家族が密室で向き合う。同時に観客も彼らが体験した取り返しのつかない悔恨や苦悩、喪失感を共有することになる。涙が零れてしまったのはどちら側の感情に同調したのか自分でもわからない。絶望の中でも人間は赦し希望を見出せるものなのか。必見。

②FALL/フォール
手に汗握るとはこういうことなのか。女性二人の関係性が変化していく終盤にかけてホラーの旨味もあってゾクゾク。600mの鉄塔に取り残される状況は間違っても私の人生に起こらないはずだが万が一のために多少のサバイバル知識と体力は常に必要。足が地についていることの幸せを噛みしめた。

③フェイブルマンズ
観る者が100人いれば100通りの受け止め方があり、人を幸せにも不幸にもし、虚構を真実に真実を虚構に変え、思いもよらない自分の心の内に気づかされ、何よりいつかこの世から消える人間と違って形として残る映像って映画って怖い!残酷!だからこそ私は好きなのだと思いながら観ていた。傑作。

④パーフェクトドライバー
思いがけず子供を守る羽目になってしまった凄腕女の物語として『グロリア』を思い出すのは当然としてさらにド迫力のカーチェイス、韓国映画らしい痛すぎる暴力場面を絡めながら終盤にかけてテンション上がりまくり、思わず手に力が入る。パク・ソダム惚れてしまうわ。

⑤ヴァチカンのエクソシスト
大変面白かったのだが、クマさんみたいにプクプクして愛嬌があって可愛くて強くて頼もしくて無駄に色気がある人がローマからスペインまで最強悪魔から人を救うためにスクーターで爆走するのだからキュンキュンしちゃって怖いどころでなくなってしまったのが残念だった。

⑥青いカフタンの仕立て屋
青い布に金色の刺繍を施す手に重なる手。互いの視線が絡み合う場面のなんとエロティックなことか。美しいカフタンが仕上がった時、男二人女一人の中で育まれた愛が静かに昇華していく。生活音が効果的。階下から流れる音楽に命を慈しむよう三人が踊る場面が心に残る。

⑦燃えあがる女性記者たち
新聞社を立ち上げたインド被差別カーストの女性たちがスマホ片手に社会問題に切り込んでいく。終始彼女らが暴力による報復を受けるのではないかとハラハラしながら鑑賞してしまった。そして命まで狙われることはない日本のジャーナリズムの不甲斐なさ、そして私自身の甘い生き方を痛感した。

➇モリコーネ 映画が恋した音楽家
映画ファンならずとも一度は聞いたことがあるはずの音楽と貴重映像に心躍る至福の157分。愛すべき音楽家は頑固さと柔軟性を併せもったチャーミングな人柄で、彼が語る制作現場裏話など楽しくてずっと聞いていたかった。彼を敬愛する監督たちの言葉も熱い。

⑨M3GAN/ミーガン
二足歩行が突然四つん這いで疾走する姿ほど怖いものはない。ホラーだけではなくドラマパートもしっかり面白くて100分の尺ながら大満足。ミーガンダンスも楽しい。後半は『エイリアン2』を思い出したが、叔母の行動が母性からではないところが良かった。子供も強くて賢いのが好印象。

⑩ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り
登場人物たちがみんな愛すべきキャラでそれぞれが強みを生かし弱点を補い合いながら結束力を高める、、というだけで胸が熱くなってしまった。主人公とその相棒がジェンダーを超えた関係というのも好感が持てる。ミシェル・ロドリゲスがカッコイイ。ヒュー・グラントが楽しそうに演じているのよ、憎たらしい顔をしながら。

以上ベスト10のほかに
昨年と同様私にはどうしても順位がつけられなかった作品として
『ブラフマーストラ』『PATHAAN/パターン』『ランガスタラム』『K.G.F CHAPTER1&2』『囚われし者ボーラー』『火花Theri』のインド映画6本を挙げておきます。

2023ベストテン 読者:SH

10本におさまらず。

香港→台湾とヌマにハマった作品(リバイバル上映から)

1.ラヴソング(1996)
2.花様年華(2000)
3.インファナル・アフェア(2002)
 全3部作4K上映 
(インファナル・アフェアIII終極無限は上映時間が合わず泣く泣く自宅でDVD鑑賞)
4.いますぐ抱きしめたい(1988)
5.少年(台湾巨匠傑作選2023)
6.HHH:侯孝賢(1997)
7牯嶺街少年殺人事件(1991)
8欲望の翼(1990)
9.宋家の三姉妹(1997)
10.熱帯魚(1995)

dokuzetu.jpg
(C)2022 Edko Films Limited, Irresistible Beta Limited, the Government of the Hong Kong Special Administrative Region. All Rights Reserved.

劇映画で敬服したのは
1.毒舌弁護人〜正義への戦い〜(香港)
2.モガディシュ 脱出までの14日間(韓国)
3.シモーヌ フランスに最も愛された政治家(フランス)
4.対峙(アメリカ)
5.アシスタント(アメリカ)
6.パリタクシー(フランス)
7.JFK/新証言 知られざる陰謀(劇場版)(アメリカ)
7.青いカフタンの仕立て屋(フランス、モロッコ他)
8.TAR ター(アメリカ)

香港関連(泣きました)
1.革命時代の少年たち
2.ブルーアイランド 憂鬱之島
3.理大囲城

問題ある社会に異議申し立てるドキュメンタリー
1.ヤジと民主主義(日本)
(実は新年に鑑賞、製作のHBC北海道放送、配給のKADOKAWAに敬意を)
2.ハマのドン(日本)
3.燃えあがる女性記者たち(インド)
4.ぼくたちの哲学教室(アイルランド)
5.裸のムラ(日本)
6.国葬の日(日本)

パレスチナ、ウクライナ関連ドキュメンタリー
1.愛国の告白 沈黙を破るPart2(日本)
2.ガザ 素顔の日常(アイルランド他)
3.パレスチナのピアニスト(イスラエル)
4.ミスター・ランズベルギス(リトアニア・オランダ合作)
5.マリウポリ 7日間の記録(リトアニア・フランス・ドイツ合作)