2020ベストテン 加藤久徳

邦画 
劇映画 
『海辺の映画館 キネマの玉手箱』(大林宣彦)
・ドキュメンタリー
『三島由紀夫VS東大全共闘』(豊島圭介)
『相撲道 サムライを受け継ぐ者たち』(坂田栄治)

洋画
劇映画
『コリーニ事件』(マルコ・クロイツパイントナー)
『ポルトガル、夏の終わり』(アイラ・サックス)
『ジュディ 虹の彼方に』(ルパート・グールド)
『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(テリー・ギリアム)
『1917 命をかけた伝令』(サム・メンデス)
ドキュメンタリー、記録映画
『粛清裁判』(セルゲイ・ロズニツァ)
『国葬』(同上)
『彼らは生きていた』(ピーター・ジャクソン)
『パヴァロッティ 太陽のテノール』(ロン・ハワード)
『ようこそ映画音響の世界へ』(ミッジ・コスティン)

umibeno.jpg
(C)2020「海辺の映画館 キネマの玉手箱」製作委員会/PSC

 去年のベスト10はコロナの影響により~と書けば言い訳は楽だが、オンラインなんてと思っている人間には酷な時代だと言いつつ、観た中から、これは良いと思うものをチョイス。洋画は例年通りベスト5だが、邦画はもうこの通り…。
大林宣彦監督の遺作である『海辺の映画館 キネマの玉手箱』は、もう、言い残すことがありすぎて音声も映像も入りきれないみたいだ。もはやフレーム脱却。でも凄い。楽しく圧倒された。時空を越えた大林流ドキュメンタリーだ!!(合掌)

 ウクライナ出身のセルゲイ・ロズニツァ監督3作品の一つ『粛清裁判』(2018)はインパクトが強烈。でっち上げとは何か?久々に脳髄を刺激された。傑作だと思う。
『三島由紀夫VS東大全共闘』は当時のテレビマン達の本気度を知ることができる逸品だが、東大出身の豊島監督としては精一杯のリスペクトなのだろう。堅苦しいのはそのためか。

2020年 マイ・シネマ ベスト10 飯田 眞由美

suki.jpg

COVID-19は、故郷の母に会うことも叶わなくし、その旅費を生む仕事の疲れを癒す唯一の楽しみの映画鑑賞を奪った。年が明けた今、映画館が閉鎖されていることはなく、大ヒットのアニメ映画は観客動員数を書き換えたほどだが、糖尿病を持つ夫と暮らす上では、我慢できるものは堪えるしかない。
嘆いてばかりいても仕様がないと、テレビやネット配信で映画に触れられたのは、もう秋だった。公開時に見逃した作品や、なんだこれはとドン引きしそうなタイトルを付けられた作品を選んで観てみた。そんな中からベスト10をチョイス。

第10位、『ペイン 魂の叫び』。 原題は〝Leave″。カタカナ1語なら『リーブ』でいいんじゃないのと思った内容。絡みあった複雑なストーリーのようでいて、実はシンプルに人間の恐れを描いた作品。抽象的な感想はネタバレ回避の定石です。

第9位は『好きにならずにいられない』。原題は〝Fusi”で主人公の名前。アイスランド映画。英語のタイトルもあり、こちらは〝Virgin Mountain″。主人公のフーシの仕事は空港の荷物係。が、彼は飛行機に乗ったことがない。そんな彼がまずは一歩を踏み出して行く情景からすれば、英題は悪くない。童貞であろう巨漢の彼を現わしているようでもある。作品自体に弾むような明るさはないのに、『好きにならずにいられない』って、どこにフォーカスすればこのタイトルになるのだろう。

第8位には『メイジーの瞳』、2014年の作品。親の離婚、これは親が決めたこと、親権や養育の期間は裁判所が決定、大人がメイジーの居場所を決めている。ラストに初めてメイジーがメイジーの欲しい思いをつぶやく。やっとほっとできた。

第7位は『同じ遺伝子の3人の他人』。2018年に発表されたドキュメンタリー。三つ子が親の都合でバラバラに養子に出されて、偶然がきっかけで三つ子と分かり三人で社会に出たことの話かと思ったのだが、秘密裡に実験観察が行われていたという告発で幕が下りる。フィクションではないが故に、その罪の重さが伝わってくる。

第6位にやはりドキュメンタリー作品の『フリーソロ』を。山岳ドキュメンタリーで高い評価を得た『メルー』の監督が撮ったもの。安全装置なし素手で絶壁を登るフリーソロの完遂を追った作品。俳優さんではないのに、登場人物はみなさん美形で、面食いの私はその点も満足だった。

第5位『ゲット アウト』。じわじわとした感触で人種差別を恐怖の域で表現した作品。Black Lives Matter運動は連綿と蔓延る怒りが生み出したのだと納得。

第4位『私がクマに切れた理由』は、クマの縫いぐるみを相手に怒ったものではありません。クマさんに隠しカメラをつけて子守りの私を監視してたから。原題は〝The Nanny Diaries”、確かにこのままだと味気ないかも。

第3位に『ゾンビの中心で、愛をさけぶ』、コロナ禍の現在にジャストミートしたゾンビ映画。いや恋愛物か。このタイトルは罪だ。なかなかの出来の作品なのだから。このタイトルで観るのを止めた人も多いのではないか。もったいない、もったいない。原題は“Zoo”。極めてシンプルかつ的を得ている。

第2位は『フランシス・ハ』。やっと観た、2012年公開の映画。このタイトルは何を意味しているのかと思いつつ観始めたのだが、そのうち、そんな疑問のことも忘れて主人公から目が離せなくなり、ラストで「あ、それでこのタイトルなのね」と爽快感を手にできる。こういう作品、好きだ。

栄えある第1位は『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』。もう勘弁して欲しい。何の恨みがあってこんなタイトルにしたのか。勿論、これは今は亡き名女優市原悦子さんの『家政婦は見た』シリーズを援用したものだろう。しかしだ、この作品は、自分を見失うことなく生きて行こうとする女性の今を語った物であり、セレブ家庭のスキャンダルを覗くストーリーとはどこも一致しないのだ。 “Starlet”が原題。主人公が大事にしているチワワの名前がスターレット。

3位のゾンビ、1位のチワワと仰天の日本題を付けられた2作品だが、まともなタイトルで落ち着いていたら、これほどの掘り出し物感は得られなかったかもしれない。
2021年は映画館で、たくさん観てそこからベスト10を選びたい。心底そう願う。

2020年の映画 順位なし(白)

2020年はがくんと減ったかなと数えたら、330本ほどでした。
劇場で鑑賞は減ったけれども東京国際映画祭は中止にならず、オンライン試写が増えました。
Amazonプライムなど配信で観たのは入っていません。それまで手を出さずにいたドラマを自粛期間中観ていました。すぐハマっちゃいますね。
リンクは作品紹介、★印は監督または俳優さんに取材した作品です。贔屓しています。好きな作品だから取材したのに、推さなくてどうする!ってわけで本数が多くなってしまいました。

邦画
アンダードッグ 前編・後編
タイトル、拒絶
ミセス・ノイズィ
カゾクデッサン
おろかもの
いざなぎ暮れた。
レディ・トゥ・レディ
泣く子はいねぇが
佐々木、イン、マイマイン
アイヌモシリ
37セカンズ

順位なしですが、すぐに頭に浮かんだのが『アンダードッグ』。2017年の『あゝ、荒野』前・後篇もボクシング映画でどちらにもトレーナーとして指導&出演しているのが松浦慎一郎さん。試合中にかける声がよく聞こえていました。スタントなしで戦う俳優さんはほんとに凄い。
ほかも一人一人のキャラが生きていて、みんなその後どうしたかなぁとつい気になってしまうような作品ばかり。あげた11本(!)のうち7本は監督が脚本も書いたオリジナルです。

次の4本は原作ありなので、探して読んで映画と比べてみるのもおすすめ。
本気のしるし 劇場版
朝が来る
のぼる小寺さん
前田建設ファンタジー営業部

外国映画
パブリック 図書館の奇跡
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー
黒い司法 0%からの奇跡
赤い闇 スターリンの冷たい大地で
レ・ミゼラブル
mid90s ミッドナインティーズ
追龍
イップ・マン 完結
はちどり
マルモイ ことばあつめ

最初の2本はコメディですが、後に続いている作品たちが描いている社会の格差も入って、それでいて楽しい作品。『ブックスマート~』は日本の『のぼる小寺さん』と同じ高校生!?と彼我の差に驚きます。主役のビーニー・フェルドスタインは俳優ジョナ・ヒル(『mid90s ミッドナインティーズ』監督もしています)の妹。二人とも痩せたら美男美女に入ると思うのですが、映画界には山ほどいるのでその体型にして特化しているのかも。

大好きな香港映画がめっきり減りました。やっと公開されたのは、ドニー・イェンとアンディ・ラウとルイス・クーの作品くらい。アンディ&ルイスの『ホワイト・ストーム』もおススメ。先に映画祭で観たので忘れていたチョウ・ユンファ&アーロン・クォックの『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』も昨年公開でした。
韓国映画はエンタメも政治的な作品も攻めているし、後ろの2本のほかにも◎『82年生まれ、キム・ジヨン』、マ・ドンソク作品も良かった。
『パラサイト 半地下の家族』『TENET テネット』は当然入るよね、と入れてません(!?)。

ドキュメンタリー
はりぼて
花のあとさき ムツばあさんの歩いた道
相撲道 サムライを継ぐ者たち
友達やめた。
れいわ一揆
なぜ君は総理大臣になれないのか
三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 
アリ地獄天国
香港画
ようこそ映画音響の世界へ

ドキュメンタリーではそれまでに知らなかったことにいつも目を開かされています。政治や環境問題、音楽家や画家の人生、市井でこつこつと尊いことを続けた人、疑問に思ったことを追求した人などなど。最近は美術館の名画を至近距離で観られるドキュメンタリーもあり、嬉しい限り。
『タネは誰のもの』
『プラスチックの海』『僕は猟師になった』
『うたのはじまり』もぜひ。

アニメーション
2020年はあまり劇場へ行けなかったので『映画 えんとつ町のプペル』
『ウルフウォーカー』『ソニック・ザ・ムービー』『ジョゼと虎と魚たち』を試写で。ほかに『クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』『2分の1の魔法』『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(劇場で)『アーヤと魔女』(NHKテレビで)と10本に満たず、でした。(白)

2020年ベストテン 菅沼正子

 100年に一度とも言える、コロナに振り回された最悪の2020年。試写室も映画館にも行けなく、そのおかげで、と言ったらおかしいかもしれないが、オンライン試写を初めて経験し、Netflixもよく見るようになった。そう言えば今年のアカデミー賞はどうなるのだろう。劇場公開なしでいきなりNetflixに出てくる作品もある。コロナとNetflix,アカデミー賞協会はどのような判断をするのだろうか。ちなみに私の2020年ベストテンはNetflix作品を除いて例年通り、商業作品として劇場公開された作品だけである。
parasaito.jpg

外国映画の部
1 パラサイト 半地下の家族 
 いまさらコメントの必要がないほど、映画界に衝撃を起こした傑作。
2 ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像
 フィンランド映画。絵画に魅せられ生涯を捧げた男の人生模様にジーン。最近はネット通販に押されて個人経営の小さな美術店は成り立たない。もう引退の時期かと考えている老美術商が、オークションの下見で1枚の肖像画に目を奪われる。<男の肖像、作者不明>となっている。長年の経験で誰の作品か彼には分かる。人生最後の大勝負に打って出る老美術商。画家の命ともいえる署名がないのはなぜか、その謎解きは宗教の知識で。
3 サンダーロード
 主人公は身辺八方塞がりになっている警察官ジム。そんな時に慈善の人だった母親を亡くした喪失感は、悲しくて、悲しくて、悲しくて。踊っても踊っても切ない。親のありがたさはその歳にならないと分からないと言うが、まさにその通り。教会での告別式で、母が好きなB・スプリングスティーンの<涙のサンダーロード>(邦題の由縁)を無音のなか涙ながらに踊り出す。それがジムなりの別れ方だったが、結局母親よりジムの醜態のほうが目立って……。見逃したくない1本。
4 ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方
 大自然と共存できる究極の農場を作ろうと、夢に向かって奮闘する夫婦の8年を追ったドキュメンタリー。雑草と言う名の植物はない。だが一般的には草取りをしてそこに育てている作物を立派に育て上げる。だがこの夫妻は生態系を観察して、生命に満ちたサイクルがあることに気づく。草を食べる、オシッコする、ウンチをする、コヨーテが鴨を襲う、鴨はカタツムリ大好き、フクロウがハリネズミを食う。こうして豊穣な果樹園・農園が活性化する。この映画のような、人体にやさしい食材を食べたいと実感する。
5 ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男ピエール・カルダン
 昨年、暮れも押し迫った12月29日、ピエール・カルダンの訃報が世界中を駆け巡った。98歳であった。映画は、モードを民主化した世界的なデザイナーのドラマチックな97年に密着取材したドキュメンタリー風のもの。ファッションの革命児といわれ、オートクチュールから脱却、プレタポルテをデパートで気軽に買えるようにして大衆に広めた。その頃ノータイの彼を門前払いした「マキシム」を20年後に買収。店内には自身が60年かけて収集した1900年代アートの数々が展示されている。MCの「好きな鳥は?」の問いの答えは「蝶々」。この自由な発想がカルダンの想像力の原点であることが分かる。
6 ぶあいそうな手紙
 ブラジル映画。ラテンアメリカらしいユーモアと人情が温かい。主人公エルネストは78歳の独居老人。息子は同居を提案するが、いまさら知らない地に行くより、住み慣れたこのマンションがいい。最近は視力の低下で不自由なこともあるが、隣近所声をかけ合い支え合って皆仲良しで楽しい。ある日届いた1通の手紙は、旧友の妻ルシアから夫の訃報の知らせ。近所の若い娘ビアに”拝啓ルシア様”で返信の代筆を頼むと「それは無愛想よ」とビア。ビアの提案どおり”親愛なるルシア様”で始まる返信が功をなしルシアとの文通が始まる。78歳だって人生も愛も可能、楽しく生きよう!万歳と叫びたい。
7 娘は戦場で生まれた
 いまだ終わりを見ない根深い中東情勢。子供の頃から戦車や銃弾の音が当たり前の光景であった中で育ち,成長した彼らは何を考えるだろう。この映画はシリアの内線を追ったドキュメンタリーで、マイケル・ムーア監督は<史上最もパワフルで重要なドキュメンタリーの1つ>とコメントを寄せている。ジャーナリストのワアドと医師のハムザ夫妻。内戦は激しさを増すばかりのなか女児が誕生。夫妻は、自由と平和への願いを込めて、アラビア語で”空”を意味する”サマ”と名付け、その証を残すため母ワアドはカメラを回し続ける。サマちゃん、もう大きくなったでしょうね。
8 キーパー ある兵士の奇跡
 実話から生まれた感動の人間ドラマ。イギリスの名門サッカーサッカークラブ「マンチェスター・シティFC」のゴールキーパー、バート・トラウトマン(1923年10月22日ー2013年7月19日・89歳没)の波瀾万丈な人生を描く。ドイツ人の彼は、世界で鉄十字勲章と大英帝国勲章を持つ唯一の人である。FC入団会見は誹謗中傷ばかりで大混乱だったが、「懸命にプレーすることで恩返ししたい」と。その言葉通りゴールを守り抜き、FCは悲願の国内カップ戦優勝を果たす。サッカー選手の人生を描きつつも、テーマは贖罪。罪、許し、和解である。
9 君の誕生日
 韓国映画。エンドマークの後も涙が止まらない。2014年4月16日、修学旅行中の韓国の高校生ら300人以上が犠牲になったセウォル号沈没事故。世界中に報道されたニュースだが、製作陣はその後の遺族たちを取材、息子の誕生日を軸に遺族たちの喪失感を描く感動作。成人にも達しない我が子を亡くした母親の心境は想像にあまりある。母親役をチョン・ドヨン、父親役がソル・ギョング。ソル・ギョングの男盛りの香りにゾッコンです。
10 ペイン・アンド・グローリー
 スペイン映画。「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」「ボルベール(帰郷)」などで知られるスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督。70歳という円熟期を迎えたのを機に、自伝的要素を盛り込むことで自らに命を注ぎ込んでいるようだ。人生の最終章まで楽しもうというメッセージが伝わってくる。感動の人間賛歌である。独自の感性による情熱的な赤や原色を使った映像美も健在。心身共に疲れきり、引退同然の生活をしていた映画監督、そんなある日、32年前に撮った作品の上映依頼が届く。その作品以来絶縁していた主役俳優との再会で監督の人生は大きく動き出す。
次点 スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話
 タイトルどおりのストーリー。実話を基にしている。パリで自閉症児をケアする施設を経営するブリュノと、ドロップアウトした若者たちを支える団体を運営するマリク。社会からはじかれた子供たちのために日々奔走する2人だが、施設は無許可のうえ赤字経営。当局は無許可を問題にして潰しにやってくるが、2人は「支援もしない政府が問題だ」と食い下がっていく。さすが!「最強のふたり」の監督。心と信念で働く2人はどんな障害者であろうと「子供たちは贈りもの」と、その献身ぶりに頭が下がる。

日本映画の部
外国映画ほど見ていないから、ベスト5でごめんなさい。
1 弥生、三月 ー君を愛した30年ー
 おしゃれなタイトルだが、なかなか辛辣なラブストーリー。昭和61年3月1日、高校生の弥生と太郎。弥生は弱き者の味方で強い信念の持ち主。太郎は通称サンタと呼ばれる明るいキャラで、サッカー選手を目指す高校中の人気者。お互いに引かれ合いながらも卒業後は別々の方向へ進み,それぞれ家庭を持ち、それぞれ苦労の絶えない茨の道ばかり。月日は昭和から平成、令和と3つの時代をまたいでも、まだ、あの気持ちは変わらない……。
脚本・監督、遊川和彦のアイディアの勝利。
2 おかあさんの被爆ピアノ
 1045年、8月6日広島、9日長崎、8月15日終戦。2020年はあれから75年。決して忘れてはならない戦争の悲惨さ。壊滅的な状況の中で奇跡的に焼け残ったピアノがあった。それを修理して全国で平和コンサートを続ける実在の調律師・矢川光則氏をモデルにしたドキュメント的映画。現在も矢川さんは8月6日には広島の平和記念資料館広場でコンサートを続けているという。矢川さんの<被爆ピアノ平和コンサート>の輪は日本のみならず海外にも広がっているという。被爆ピアノの音色の美しさとともに戦争の愚かさ、むなしさを知ってほしい。
3 ジャズ喫茶ベイシー  ーSwiftyの譚詩ーBallad
 昭和45年、岩手県一関市に開業した「ジャズ喫茶ベイシー」。そこに集う著名人が語るジャズの魅力。庶民が自由を求める心の叫びとして歌ったのがジャズ。小澤征爾は「ジャズの面白さは自由さだ」と証言。ベイシーは生演奏ではなくレコードで聴かせる”レコードの図書館”でもある。ベイシーの”かっこいい音”が聴きたくて、ジャズ、オーディオファンが訪れる。店名の由来は、マスターの菅原正二さんが、ジャズピアニストのカウント・ベイシーが大好きだからというのだが、「僕の名前が店名でうれしい」と言ってくれ、ライセンス料を要求されなくてホッとしたという。
4 糸
 ウエディングソングの定番といわれる中島みゆきの名曲『糸』に着想を得たラブストーリー。平成元年生まれの漣と葵の出会いと別れ、そしてまた運命の糸にたぐり寄せられるような巡り会い。平成時代を生きるそれぞれの体験から、社会情勢や出来事から分かる平成という時代。平成史としても役立つ貴重な1作。
5 嘘八百 京町ロワイヤル
 本当の詐欺師はだれだ。古田織部の幻の茶器をめぐって炸裂するだまし合い合戦が痛快。私の大好きな2大スター、中井貴一が古美術商、佐々木蔵之介が陶芸家、この2人を翻弄するマドンナに広末涼子が加わり、前作に負けず劣らずの艶やかさ。

観た順で選んだ10本 (千)

コロナ禍の2020年(現在も続いてますが…)その他の諸事情も重なって、かつてない少なさの50本の映画鑑賞でした。ジャンル分けはせず順位も無く、観た順で選んだ10本です。(今8本です。あと2本はのちほど)

『月夜釜合戦』 
佐藤零郎/2017
山谷にあるミニシアター「泪橋ホール」へ観に行きました。名物の餃子を頬張りながら、なんと私の目の前に座っていたオッチャンは出演者のひとり。山谷で西成の映画を体験するという忘れられない作品。

『ちむぐりさ~菜の花の沖縄日記』
平良いずみ/2020/ドキュメンタリー
10代の菜の花ちゃんが実際に体験した沖縄での暮らしをそのまま映し出していて…心に深く刺さりました。

『ラストレター』 岩井俊二/2020
監督の出身地である仙台市太白区にあるMOVIX仙台で鑑賞。さすが出身地なだけあって劇場は盛況!!
作品の舞台ももちろん宮城県で、現在宮城県民の私は単純に嬉しかったです。監督、もっと東北で撮って!!

yama2.jpg

『三島由紀夫vs東大全共闘50年目の真実』
豊島圭介/2020/ドキュメンタリー
仙台駅からすこし北に行った所にあるフォーラム仙台にて鑑賞。東大のひとによる東大の映画なんだけど、その当時東大生だった
芥正彦さんが最高。三島さんが切腹してまで訴えたかったことって何だったんでしょうか……

『プリズン・サークル』
坂上香/2019/ドキュメンタリー
仙台駅前にある映画館「チネ・ラヴィータ」で鑑賞。交通至便な所にある劇場なので、よく行ってます☆
島根県の刑務所でおこなわれているセラピー的プログラム。それを受けることによって、再犯率がとても減っているという…
だったら、もっと国内にあるさまざまな刑務所で、このプログラムを取り入れるべきではないでしょうか。

yama1.jpg

『なぜ君は総理大臣になれないのか』
大島新/2020/ドキュメンタリー
前述と同じチネ・ラヴィータにて鑑賞。劇場の壁に貼ってあったポスターには大島監督のメッセージ&サインありました!!
真面目なひとほど損をすると言うか…正義感だけでは勝てないことが沢山あると、わかっちゃいるけど私まで悔し涙。。

『音楽の中に 萩原朔太郎と両角文則のマンドリン』
桜井顕/2020公開/ドキュメンタリー
群馬県前橋市のミニシアター「前橋シネマハウス」にて鑑賞。前橋が誇る詩人・萩原朔太郎は大変なマンドリン愛好家だったそうで
その孫弟子にあたるモロシー先生を追った貴重な作品。

『凱歌』
坂口香津美/2020/ドキュメンタリー
年末、渋谷のイメージ・フォーラムへ行って来ました。まさか年明けに緊急事態宣言が再発令されるなんて…
その前に観といて良かったです。東京都東村山市にあるハンセン病の施設が舞台。ひどい差別、それが日本の国策なんだから、ほんと悲しい…。