2019 劇場ベストテン 山本聖美(読者 広島在住)

2019年 No. 1は『バーニング 劇場版』

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(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved
見て見ぬふりしたい 流れるような残酷を、見て見ぬ振りなど当然出来ず。緊張と疲労で目ェ血走る。

あとは順不同です。
☆ ボーダー
  北欧映画の 何とも云えぬ 独特過ぎる味。

☆ ドント・ウォーリー
  ルーニーは女神!!ホアキンは、女神を嫁にするワケっすね。

☆ ゴールデン・リバー
  予想外のラストシーン! タイトルに リバーと付くと◎が多いのかな。すぐに思いつく『ウィンド・リバー』と『リバー・ランズ・スルー・イット』は◎ 『ミスティック・リバー』と『クリムゾン・リバー』は○かな。

☆ ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド( 以降 ワンハリ )
  実際には起こらなかった、夜深い 甘く穏やかなラストシーンが 忘れ難い。

☆ ファースト・マン
  メインの曲もゴズリングも素晴らしく、クレア・フォイは迫力。月で、娘の形見をそっと落とすシーンに涙を禁じ得ず。時間の関係で2D字幕だったが、是非IMAXで観たかった。

☆ 神と共に Ⅰ ,Ⅱ
  韓国映画には 父母世代にツボ役者が存在する!チュ・ジフンも勿論ツボじゃけど❤︎

☆ 毒戦 BELIEVER
  キム・ジュヒョク 最後のキレ演技は眼福。ジョニー・トー作を もう1度観たくなった。

☆ ブレードランナー ファイナル・カット
 IMAXで観て 改めて感動!友が「今観ても 全く新しいブレランはホンモノの傑作じゃね」と云ってて無茶苦茶頷いた。

☆ ヘレディタリー/継承
 クリッカー嬢ちゃんの 蟻のたかった首!!

『バーニング』を観たのは5月、その時点で「今年はもう これを超える映画はないだろう」と思った。どうしようもないな…凄いな としか云えない。原作、村上春樹の『納屋を焼く』は昔読んだが 「こんな話だったか…?」〜と云う様な事はよくある、再読したいなと思う。
カンヌでは『パラサイト 半地下の家族』が グランプリを取り、去年の『ローマ』みたく、オスカーの 外国語映画賞以外にもノミネート。
オスカーは明日だ、結果や如何に!?作品賞・監督賞、もしかして もしかするのでは!!
友達が「映画では 韓国にとても敵わない」と言っていたが、全く同感。近年、定期的に 韓国のキッツい映画を観ないと物足りなくなってしまった。

2019ベスト3を選ぶとしたら『バーニング 劇場版』『ワンハリ』『ヘレディタリー/継承』。次作が楽しみな監督ばかり。

『パラサイト 半地下の家族』『フォードvsフェラーリ』「ジョジョ・ラビット』『家族を想うとき』『リチャード・ジュエル』は 今年に入って観た。
既に 2020ベストテン入り確実作が!

中国・香港映画『桃さんのしあわせ』上映会(3/13)@東京外国語大学

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日時  2020年3月13日(金)18:00開映(17:30開場)

会場  東京外国語大学 アゴラ・グローバル プロメテウス・ホール

プログラム
◆映画『桃さんのしあわせ』本編上映
  監督・製作:アン・ホイ
  出演:ディニー・イップ、アンディ・ラウ、チン・ハイルー、アンソニー・ウォン他
  シネジャ作品紹介

◆トーク解説:
1. 「高齢者の在宅ケアと中国文化」澤田ゆかり(東京外国語大学教授)
2. 「『妹仔』から『外傭』まで:『 桃さんのしあわせ』に見る香港の家事労働者イメージ」小栗宏太(東京外国語大学博士後期課程)

★入場無料、申込み不要(先着501名)、一般公開

主催:東京外国語大学 TUFS Cinema
協 力:東京外国語大学多言語多文化共生センター

作品内容、登壇者経歴、会場アクセスなど詳細はこちらで!


posted by sakiko at 22:07Comment(0)上映会

2019年ベストテン 菅沼正子

 2020年が2月に入ったのに、今さらベストテンなんてと思ったが、やはりベストテンの記録は残しておきたい。選出するあの苦しみと楽しさ、ワクワク感を逃したくない一心で2019年を振り返りたい。毎年同じことを言うが、順位はあってないようなもの、気にしないでほしい。

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(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

外国映画の部
1,僕たちは希望という名の列車に乗った
 ベルリンの壁ができる以前の1956年の東ドイツの物語。遊びに行った西ベルリンの映画館で、ハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像に衝撃を受けた2生徒の提案で、犠牲者に黙祷を捧げたため、退学処分問題に発展するる。生徒各自の葛藤。青春の痛みと熱さを描く実話。
2,グリーンブック
 アカデミー賞作品賞受賞作。アメリカ南部をツアーする天才黒人ピアニストと彼に運転手として雇われたイタリア系の用心棒的な男との凸凹旅行がおもしろい。タイトルの「グリーンブック」とは、黒人が利用できる旅行ガイドブックのこと。黒人差別はアメリカの永遠の課題か。トランプ氏がいう”アメリカ・ファースト”に有色人種は除外されてると私は思う。
3,ガンジー島の読書会の秘密
 戦争の不条理を描いた感動作。人と人の心をつなぐ本の力のすばらしさが分かる。ラストは泣ける。泣く映画大好き。
4,トールキン 旅のはじまり
 「ロード・オブ・ザ・リング」の原作者トールキンの前半生を描く。前線で自分も意識もうろうなのに、親友を気づかうトールキン。彼の作品の原点を見る。
5,ちいさな独裁者
 権力を手にした人間がいかにして怪物的な独裁者に変貌していくのか。権力という魔力、人間の弱さをえぐり出す衝撃作。
6,少女は夜明けに夢をみる
 イラン発の社会派ドキュメンタリー。首都テヘランにある少女更生施設が舞台。彼女たちは家よりも更生施設のほうがいいという、なんとも悲しい実話。
7,ビリーブ 未来への大逆転
 アメリカの最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの自伝的映画。アメリカ史上初の<男女平等>裁判に勝利したことで有名。
8,存在のない子供たち
 レバノン映画。このところ中東情勢のニュースが多いが、映画も中東地域が元気。主人公の少年は戸籍がない。だから学校に通うこともできない。法的には社会に存在を認められていない子どもなのだ。そこで少年は「僕を産んだ罪」で両親を告訴する。社会の理不尽さに悲しみは感じていても、心は折れていないことを証明する、その目の輝きと笑顔のすばらしさよ。
9,ゴッホとヘレーネの森 クレラー・ミュラー美術館の至宝
 無名時代のゴッホの絵に魅せられた女性ヘレーネの生き方に拍手。余裕があったらこの美術館に行きたい。
10,運び屋
 大好きなクリント・イーストウッド監督・主演作。高齢になってますます魅力が増してきた。充実した人生。次回作も期待。
次点 マイ・ブックショップ
 1959年のイギリス。書店が1軒もない町で書店を開業する女性の生き方を描く。電子書籍時代になった現代、昔ながらの書店に敬意を表して。

日本映画の部
近年の日本映画の素晴らしさ!製作本数も多いし、そのクォリティの高さ。とはいえ、外国映画ほど見ていないから、ベストスリーで、ごめんなさい。
1,半世界
 中学からの同級生男3人の友情と、日常や葛藤を描いた奥行きの深い人間ドラマの秀作。監督・阪本順治。出演=稲垣吾郎、長谷川博己、渋川清彦。
2,記憶にございません
 これぞ三谷幸喜監督と思わせる爆笑コメディ。笑いだけでなく、鋭い視線で政治もチクリ!
3,男はつらいよ お帰り寅さん
 日本の盆と暮れの風物詩になった”寅さんシリーズ”。渥美清さんが亡くなりしばらく途絶えていたが50本記念として復活。シナリオの巧みさで、過去のフッテージから渥美清の寅さんの出番となる。とはいえ、現在の高齢化社会を見つめた老人ホームに焦点を当てているのもスゴイ。
 

2019 ベスト10 加藤久徳

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洋画(ベスト10 順不同)
存在のない子供たち
永遠に僕のもの
さらば愛しきアウトロー
荒野の誓い
ゴールデン・リバー
アイリッシュ・マン
ある女優の不在
グリーンブック
パピヨン
淪落の人


邦画(ベスト5 順不同)
決算!忠臣蔵
多十郎殉愛記
新聞記者
メランコリック
長いお別れ

ドキュメンタリー映画
洋画
ユーロクライム!70年代イタリア犯罪アクション映画の世界
ドルフィンマン ジャック・マイヨール、蒼く深い海へ
氷上の王 ジョン・カリー

邦画
主戦場
人生をしまう時間
誰がために憲法はある


 洋画のベストは10本にしました。邦画のベストは5本だけ。ドキュメンタリーは洋邦ともにベスト3だけにしておきました。
 今年のベスト、つまり、ドラマ・フィクションの部門では、僕の基本ベースである〈SF映画・西部劇・時代劇〉の3要素のうち、先頭に位置するSF映画が洋邦ともに入らなかったです。『ファーストマン』などは宇宙が出てきても、もはやSF(特撮)映画には分類できません。伝記映画であり、人間ドラマです。秀作ですが10には入れたくありませんでした。
 そのかわり西部劇が2本ありました。『ゴールデン・リバー』『荒野の誓い』がそれで、前者は1960年代前後のヨーロッパ製ウェスタンの流れをくんでいると思います。後者は今風に見えて実は、1950年代頃の西部劇のセオリーを正統に受け継いでいると思いました。この2本を観られて本当に嬉しかった!
 そしてチャンバラ(時代劇)も2本。『決算!忠臣蔵』はユニークな視点の原作を活かした佳作。これでもし、最近になって明らかになった討ち入りの真相が取り入れられていたら、この映画は傑作になれたかもと僕は思います。
 もう1本の『多十郎殉愛記』は見廻り組の隊長を演じた寺島進を助演男優賞に選びたい。この人、北野武監督の作品でブレイクしたのは有名ですが、元々は時代劇の殺陣師出身だったことを最近知りました。俳優としては斬られ役の人でした。今回の隊長役では剣の達人の役でもあり、自分の資質を生かした生涯初の大役ではないでしょうか?実に良かった。
 最後のドキュメンタリー部門ですが、流れで行くと『ユーロクライム!70年代イタリア犯罪アクション映画の世界』が僕にピッタリで、ノオリノリで観られた。どこか安っぽくていかがわしいイタリア製のフィルムノワールの系譜とその裏表を、フランコ・ネロやジョー・ダレッサンドロなど、現存するスター、監督らの虚実入り混じった証言や作品映像で楽しませるもので、この手の映画に興味のない人でも面白く観られると思います。
 ドキュメンタリー映画って、出来の良し悪し以前に興味を持てるかですよね。この5作品も、その意味で素晴らしいものでした。『誰がために憲法はある』での独白シーンが見事な渡辺美佐子女史には、主演女優賞を差し上げたいものです。

2019年 マイ・シネマ ベスト10 飯田 眞由美

2019年も大小様々な映画を観ることができました。東京ほどではないけれど、電車で4,50分も移動すれば、どこかの街の映画館で好みの作品に会えるのは、神奈川県の地の利の良さかな。

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(C)2017 Inkpot Films Private Limited,India

第10位は『あなたの名前を呼べたなら』。このタイトルだと、好きな人の名前を呼びたい女性の姿が浮かぶのだけど、主人公の女性は自分の生活や実家への仕送りを考えると、雇主を名前で呼ぶなんて死活問題なのでとんでもないこと。ロマンチックな邦題よりは原題の“SIR”のほうが、格差の関係を現わしていてしっくりきました。

第9位は『私はマリア・カラス』。マリアがカラスを語った映画。最後に流れる歌は、私の大好きな「わたしのお父さん」。いつもアンコールで歌っていた曲だとか。

第8位には『僕たちは希望という名の列車に乗った』。青春ドラマにサスペンスと政治不安を混ぜたら、年代を問わずに夢中になれる作品ができました、というところ。

第7位は『マリッジ・ストーリー』。アダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソン演じる夫婦の、離婚が完結するまでを描いた作品。大げさな筋書きはないけれど、俳優たちの存在感が光っていました。

第6位は『THE GUILTY ギルティ』。緊急通報を管制するある警察官が、通報電話の音声のみで被害者を救出しようとするサスペンスと思いきや、最後には二つのストーリーのどんでん返しが待っているデンマーク映画。

第5位『ビリーブ 未來への大逆転』、4位『RBG 最強の85才』はともに米国の現役最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグを主人公にした作品。『RBG』はドキュメンタリー。勇気をもらうだけじゃなく、結婚の本質も味わったりできます。

第3位には『パリの家族たち』をいれました。この日本語タイトルは宜しくない。
幾人かの女性の日々の暮らしから、生きること産むことを正面から取り上げている。家族という括りではなく、ひとりの人間として生きることを実感できる作品だから。

第2位は『天国でまた会おう』。戦争の中で知り合った男二人の数奇な運命が、戦争の愚かさを描きつつ、悲劇、喜劇、映像美まで楽しませてくれる素晴らしい1本。

そして栄えある第1位は『メランコリック』に決定しました。低予算で作られたことがクローズアップされますが、サスペンスあり、友情あり、喜劇も裏社会の恐さも一度に味わえ、観終わった後はなんだかスッキリ。こんなお得な映画はそんなにしょっちゅうお目にかかれるものではありません。
2020年もいい映画が待ってるよと、2019年のベスト10が映画館行きをプッシュしてくれました。