『この地にわが墓所あり』――レバノン内戦の記憶と証言@東京大学東洋文化研究所(2/8)

中東映画研究会より、久しぶりにご案内をいただきました。
レバノン生まれのレーン・ミトリー監督も来日し、上映と共にシンポジウムが行われます。
どなたでも参加できます。直接、会場にお出かけください。 (景山咲子)


シンポジウム:アジアを知る
『この地にわが墓所あり』――レバノン内戦の記憶と証言

Symposium: Knowing Asia
In this land lay graves of mine: Memories and Testimonies of The
Lebanese Civil War

主旨:
 戦争や戦時暴力の記憶にいかに向き合うかは、現代において重要な問題の一つです。内戦下など、誰もが、時には顔見知りの関係であっても、被害者や加害者になることもあります。
 本シンポジウムでは、戦争や戦時暴力の問題と向き合うため、そして、今まさに内戦下にあるシリアの将来を考えるために、その隣国のレバノンに目を向けます。レバノン内戦の終結後四半世紀を経て、その記憶がいかに語られているのかを、証言映像とともに見ていきたいと思います。

日時/Date
2019年2月8日(金)17:30-20:30(17時開場)
Friday, February 8th, 5:30 pm- 8:30 pm

会場/Venue
東京大学東洋文化研究所3階大会議室
Main Conference Room, 3rd floor, Institute for Advanced Studies on Asia,
The University of Tokyo

プログラム
司会:ケイワン・アブドリ(神奈川大学)
17:30 開会の言葉(後藤絵美 東京大学)
17:40 解説(黒木英充 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
18:00 ドキュメンタリー映画「In This Land Lay Graves of Mine」上映開始
(110分、Reine Mitri監督作品、、アラビア語音声、英語字幕)
19:50 休憩
20:00 レーン・ミトリー監督を迎えて
20:30 閉会の言葉(長沢栄治 東京大学)

監督紹介
レーン・ミトリー Reine Mitri
レバノン生まれの映画監督・プロデューサー・文筆家。レバノン、特にベイルートの社会変化に注目しつつ、人々の記憶を問う映画を製作している。今回の上映作品のほかに、Lost Paradise (2017)、Vulnerable (2009)、The sound of footsteps on the pavement (2004)などのドキュメンタリー作品がある。

上映作品紹介
In this land lay graves of mine
(2014, Lebanon, France, Qatar, UAE) 110 min.
レバノン内戦(1975ー90年)のなかで、虐殺と強制移住は、キリスト教徒・ムスリム、レバノン人・パレスチナ人を問わず多くの人に降りかかった。様々な立場の内戦経験者の証言と記憶をもとに、今日もなお人々が不安にとらわれ、人口移動と土地所有の問題が宗派主義的に語られる現実と、そこで抱える人々の苦悩を描き出す。

主催:
科研費基盤研究(B)
シリア内戦の比較研究―レバノン・旧ユーゴスラビアの内戦と戦後和解(代表:東京外国語大学・黒木英充)
科研費基盤研究(A)
イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究(代表:東京大学・長沢栄治)
東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク

共催:

中東映画研究会
東京大学 東洋文化研究所・班研究「中東の社会変容と思想運動」
東文研東洋学研究情報センター・セミナー

詳細はこちらをご覧ください
https://asnet-utokyo.jp/studies/event/5003

2018年ベスト映画  米原弘子

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(C)2017 Twentieth Century Fox

昨年映画館で鑑賞した123本の中から邦画、洋画10本ずつ選出。

【邦 画】
『菊とギロチン』
女性蔑視、貧困、差別、右傾化と、大震災後溜まりに溜まっていた膿が吹き出すように表出する日本の暗部。現代とシンクロする物語の舞台は大正末期。そんな時代の閉塞感を突き破るエネルギーを3時間浴びまくり熱に浮かされたようになってしまった。凄いとしかいいようがない。本年度の邦画ベスト1作品。
『きみの鳥はうたえる』
ただ流れているだけの無為な時間でも確実に人と周囲を変え、先の見えない未来へと背中を押す。その後が語られないラストシーンは時が永遠に封じ込まれたかのような不思議な余韻があった。柄本佑、染谷将太、石橋静河がそれぞれ大好演。特に包容力と儚さを体現する石橋が魅力的で彼女が歌う「オリビアを聴きながら」に胸を掴まれた。カメラワークもユニーク。
『寝ても覚めても』
冒頭の不穏に満ちた二人の出会いから物語に引きずり込まれ、恋愛という名の究極のエゴを見せつけられ、後半、愛した男と同じ顔を持つ男をひたすら追いかける女のロングショットで完全にノックアウト。はぁ恐れ入りました。濱口監督の商業映画デビュー作は忘れられないものになった。
『blank13』
借金を残したまま失踪した父親との13年ぶりの再会と家族の再生の物語で70分の尺ながら丁寧に作られた良作。父親の素顔が明かされる葬儀シーンが役者達のアドリブというから驚き。父親が一人の人間としていろいろな側面があることを理解することが子の成長ということか。斎藤工監督の次作も期待。
『カメラを止めるな!』
無事ネタバレ回避して観ることができた。これは大ヒットしますね。面白かった。なんといっても劇場内に笑い声がシンクロし、上映後あちらこちらから「面白かったねー」の声が聞こえるって最高の映画体験ではないですか。この映画は3回観に行ってしまった。役者はみな個性的でその中でもひときわ目を引く竹原芳子さん。この作品が映画デビュー作と聞いてびっくり。
『恋は雨上がりのように』
年齢に関係なく一つの出会いがもたらす心の変化と一歩前へ踏み出す勇気。決して中年男性と女子高校生の恋愛ものではない。登場人物誰もが真っ当に日々生活している真っ当な人たちで、ストレスなく鑑賞でき笑いもあって爽快感でいっぱいに。小松菜奈の存在感がすごく彼女がいるだけで場が一転、菜奈色に染まる。青空をバックに彼女が凛と立つ姿は鳥肌ものだった。
『斬、』
平和の世を守るという大義名分が狂気と破壊へと変わる恐ろしさ。壮大で美しい自然の中で人だけが人を傷つけ血を流し苦しみに喘いでいるその愚かしさ。音楽は依頼していた石川忠さんが亡くなり、CDや石川さんの自宅にあった曲の断片を張り付けて編集したと塚本監督が舞台挨拶でおっしゃっていた。素晴らしかった。
『散り椿』
これぞ日本映画の神髄、時代劇における圧倒的様式美を堪能。雪の中の、まるで墨絵のような画面に浮かび上がる殺陣シーンが美しくそして本当に凄かった。色気ダダ漏れの岡田准一が三船敏郎と重なって見えてしまったのは私だけでないはず。良い役者だなぁ。年齢を重ねた今後が楽しみ。長生きしよう。
『友罪』
罪を犯した者が幸せになることは許されるのか否か、許されるとしたら罪の度合いで線引きされるのか否か。答えなんてないことはわかっているが、昨年身近な場所で起きた事件と重ねてしまい決して他人事ではない話だと様々な思いがこみ上げてしまった。作り手、役者の真摯さ、熱意が伝わる作品。
『止められるか、俺たちを』
60年代後半、若松プロに集まった映画人たち。「何者かになりたい」という凄まじい熱量で駆け抜けた一人の若い女性にスポットを当てることで普遍的な青春物語となっている。あの有名人がこういう風に繋がっていたのかと興味津々。門脇麦、井浦新がさすがの上手さ。

【洋 画】
『スリー・ビルボード』
鑑賞後、言葉にならないほど心が乱れる。たかが広告されど広告。3枚のビルボードの裏で暴かれる人間の本質。醜く汚く自分勝手でそして耐え難い後悔や闇を抱えながら、これから先は他者からの微かな優しさを受けてどうにかこうにか歩み寄って生きていくのが人間。洋画ベスト1映画。
『フロリダ・プロジェクト』
オープニングで使われたCelebrationで心を鷲掴みされる。どんな状況下でも毎日が冒険でマジカルでセレブレーションに満ちている子供たちの生活。大人が泣く瞬間がわかる彼らを守れるのは大人だけなのだ。タバコに火を点けると廊下の照明が灯る。誰の周りにも奇跡はある。
『パディントン2』
ちょうど観た日が大寒波だったのだが身も心もほっこり温まった。優しさや親切が我がことのように身に沁み涙がこぼれる。愛らしき熊と互角に渡り合う、むしろ喰ってしまったヒュー・グラントの素晴らしさ。あのミュージカル見せられたら惚れるしかない。マーマレード手作りしたくなる。結局人を救うのは他者からの思いやりや優しさしかない、ということ。
『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』
ミュージカル大好き人間にとっては最高な作品。どこからともなく人が湧いてきて始まる群舞、流れるダンシング・クイーンにこちらの気持ちも最高潮に。私も端っこの端で手拍子するだけでいいからダンスに参加したかった。ミュージカルの醍醐味をあますところなく堪能。若き日を演じたリリー・ジェームスの内側からほとばしる生命力に圧倒される。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
思い決断を下さねばならないケイの苦悩を一番理解していたのが周りの男たちではなく同じ女性だったということに胸が熱くなってしまった。法廷を後にする彼女を敬意をもって見つめる女性たち。彼女らがこれからの社会を作っていくという希望。最高の女性映画。
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』
誰もが幸せな気持ちに満たされる一本。観終わった後しばらくニコニコが止まらなかった。人間は互いに対等である、外見ではなく相手の本質を見る、そして決して自分を見捨てない。一度しかない人生を悔いなく生きる上で大切なことを笑いと役者たちの達者な演技で見せる。最高。
『オンリー・ザ・ブレイブ』
時間潰しで観た作品だったがこれが最高だった。一つ一つ重量感ある装具品が大きなバッグに収められていく冒頭場面でこれから向かう世界の過酷さがうかがえ震える。ラストがどうなるか知らなかったのもあるが死亡フラグに怯え、とにかくみんな無事にいて!!の思いが交錯し途中ヘトヘトになってしまった。最後は唖然茫然。
『ウインド・リバー』
肺が潰れるほどの極寒の地へ追い込まれている先住民がいまだ存在するという現実に戦慄。知らなかった。すべてを覆い隠すように広がる寒々とした空と白い雪世界。薬物、治安悪化など負の連鎖の犠牲となる女性たち。しんどい、が、微かに希望がもてるラストに救われる。
『判決、ふたつの希望』
レバノンにおけるパレスチナ難民問題。一人の人間として向き合えば解決できることも国家や人種、宗教が絡むとどんどん問題が肥大化していく様は普遍性がある。裁判ものは血圧急上昇する恐れがあり好んでは観ないのだがこの作品は社会派エンタメとして面白かった。多くの人に観てもらいたい。
『ビューティフル・デイ』
台詞は最小限、絶望が、苦しみが、やりきれないもどかしさと共に波のように襲いかかる。人一倍純粋でありながら闇に絡めとられもがき続ける主人公をホアキン・フェニックスが大好演。チェ・ミンシクと双璧をなすハンマーが似合う男。大人になったらロザムンド・パイク系美女になりそうなニーナ役のエカテリーナ・サムソノフちゃんの可愛さと存在感で将来大物になる予感。

2018ベストテン 熊谷睦子

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(C)E.x.N K.K.

★僕の帰る場所
今の日本映画界でこんなに誠実な映画づくりをしている作品がどのぐらいあるだろう。
藤元明緒監督、渡邉一孝プロデューサーのこれからにも期待。


★大和(カリフォルニア)
沖縄と基地の問題はすぐ浮かぶけれど、大和市のことは全然知らなかった。宮崎大祐監督が地元への愛憎交え描いた傑作と思う。韓英恵も素晴らしい。

★海を駆ける
ディーン・フジオカの映画と思って見たら、命についてのアジア的な寓話だった。深田晃司監督の実はアナーキーな部分が現れた作品と思う。

★教誨師
死刑囚と牧師の対話だけなのに、映っていないことまでを想像させる。
罪とは?悪人とは?大杉漣さん、もういないなんて信じられない。


★泳ぎ過ぎた夜
北国生まれの私にとって、真っ白な雪の世界はとても映画的。
「僕の帰る場所」もだけど、子供の表情をどうやって撮ってるんだろうと思った。


★パンク侍、斬られて候
石井岳龍監督の「爆裂都市」を高校時代に見たのがきっかけで日本映画を好きになったので、この作品は涙ものでした。

★最初で最後のキス
これも自分の高校時代を見ているようでした。でもラストは衝撃。この作品を個人の方が気に入って配給するために会社を作ったというのも驚きました。

★スリー・ビルボード
映画ももちろんだけど、アカデミー賞の主演女優賞のスピーチ!何度動画で見返したか。
「教誨師」のように人物像が多層になっていて、映画という表現の懐の広さを感じた。


★フロリダ・プロジェクト
罪を憎んで人を憎まずという言葉があるけど、生きるために罪を犯す人を、責めることが正しいのだろうか。
この映画も子供の表情が素晴らしい。


★アイ,トーニャ
モデルがいる実話なのだけど、これもまた憎みきれない人物たちばかりで。エンドクレジットの本物の映像がそっくりでビックリ。